【朝カルTimes:vol.44】狂言講座へ来ておくりゃれ~(中之島)

「やいやい」「心得た、心得た」「アムアムアムアムアム」……月2回、水曜の夜に中之島教室のスタジオ1から、独特のせりふ回しで朗々とした声が響いてきます。江戸時代初期からの歴史のある名門・茂山千五郎家が指導する狂言講座です。現役の狂言師から直接指導を受ける貴重な2時間。時折笑い声のする教室で、受講する皆さんは真剣そのものでした。(中之島教室講座部・菱田ゆう子)

掲載日:2026年3月26日

繰り返しで体に刻みます

今期は狂言「附子(ぶす)」と小舞「盃」。取材日は茂山茂先生の指導でした。

「桶の中は『附子』という猛毒だから食べるでない」と主から留守番を言いつけられた太郎冠者と次郎冠者。桶の中身が砂糖と気づき全部食べてしまいます。言い訳をするために掛け軸や天目茶碗を壊して、大声で泣いて主の帰りを待つという滑稽話です。

台本を読み込み、独特のせりふと動きを体に叩き込むのが狂言のお稽古です。基本はせりふと動きの反復。先生が共に動き、声を出し、手本を示すのを目で見て、耳で聞いて、繰り返し繰り返し全身で学びます。先生の所作を追いかけるように動きます。

どのように泣くのか 泣いてみせるのか。指を揃え、目を隠し、腰をかがめて全身で悲しみを表現します。「エーーーエ、エンエン」。泣くシーンもどこか滑稽さを感じるのが、狂言の面白いところだと感じました。

稽古は頭と体をフル回転

主が帰宅 「南無三宝。台天目までも微塵にしよった。己等両人、生けておく奴らではないぞ。」太郎冠者「とても生きておかれまするまいと存じ、附子なと食うて死のうと思うて、のう次郎冠者」「一口食えども死なれもせず」「二口食えども死なず」「三口四口」「五口」「十口余り」。太郎冠者と次郎冠者が主秘蔵の砂糖を食べてしまい、その言い訳に、ふざけて相撲を取っていて、掛け軸を破いて、茶碗を割ってしまったから、猛毒の『附子』を食べて死のうとした……主は、砂糖はなくなるは、大切にしていた掛け軸や茶碗を壊されるは、と踏んだり蹴ったり。熱の入った稽古を見ているうちに、物語が見えてきました。

「あの横着者、誰そ捕らえてくれい。遣るまいぞ、遣るまいぞ、遣るまいぞ、遣るまいぞ、遣るまいぞ、遣るまいぞ~」。背筋をピンと伸ばして場面の退場です。

座っていながら体も手も動く、口も動く。演者を交代しながら、頭と体をフル回転させるみなさんです。う~ん、健康づくりにも役立ちそうですね。

「プロの声をこんなに間近で聴けるなんてすごいことなのよ」「身体に響く声は健康にいい。歌はピアニッシモと言われたりするけど…狂言なら思う存分大きな声を出せる!」と、受講者の感想を聞かせてもらいました。「お稽古の合間に先生から狂言についてのお話を聞けるのも楽しい」との声もありました。受講して、狂言鑑賞がますます楽しくなったという方も。自分で演じるということは、とても貴重な体験なのですね。

教室で2時間をご一緒させていただき、せりふの独特な調子や、リズムのある言い回しが頭から離れなくなりました。仕事中も何かの拍子に、「遣るまいぞ~」と口をついて出てしまいそう。狂言のせりふは「~でござる」といった当時の言葉が使われていますが、意味は十分に伝わって自然と笑えてしまいます。現代でも通じる普遍的な面白さが狂言の魅力です。

さあ皆さん、「狂言講座へ来ておくりゃれ~」。

茂山千五郎先生とQ&A

ーー教えるときに気をつけていることや、大事にしていることはありますか?

「難しく考えてもらわずに、元気よく楽しんでもらえるように心掛けています」

ーー狂言を習うとどのような良いことがありますか?

「非日常を体験することが出来たり、大きな声を出すのでストレス解消になります」

ーーはじめたいと思っている方々や初心者へのメッセージをお願いします。

「古典芸能ではありますが、演じていてもとても楽しい芸能です。豊臣秀吉や徳川家康も好んだ狂言を一緒に楽しみましよう!」

講師プロフィール

茂山 千五郎

十四世 茂山 千五郎(しげやま・せんごろう)

1972年生。4歳で『以呂波』のシテにて初舞台。93年花形狂言会入会。HANAGATAや能楽グループ『心味の会』等での活動を通して、狂言だけでなく能のファン開拓にも力を注いでいる。大阪市咲くやこの花賞、文化庁芸術祭新人賞、京都府文化賞奨励賞受賞。

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この連載について

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