【朝カルTimes:vol.9】ペリー横浜来航からの国際化たどる(横浜)

アメリカ東インド艦隊司令長官マシュー・ペリーが横浜に上陸し日米和親条約を締結してから今年で170年になります。その5年後に開港した横浜は諸外国との交流の場所となり、日本の国際化・近代化の実験場となりました。そんな歩みと変化を日記などの文献、浮世絵、古写真、古地図といった多くの資料を使って解説する講座が横浜教室にあります。(横浜教室長・蝶名林薫)
掲載日:2024年8月8日
日記でわかる地元住民の意識
昨年10月から毎月1回の「国際都市横浜と日本の近代化」。講師は横浜開港資料館(横浜市中区)の館長、西川武臣さんです。
講座はペリー来航から始まりました。文献資料は、西川さんが手紙や日記などの必要部分を自分で入力したペーパーを用意し、読み解きながら解説してくれます。江戸時代の文章を読み慣れていない方でもよくわかります。

=横浜開港資料館
最初の1853(嘉永6)年の浦賀来航では、警備にあたっていた彦根藩の武士が妻への手紙で、城ケ島(三浦半島の南端)の沖合4~5里に異国船4隻が現れたことにふれ、「終に一度は死する命、死して美名を後代に残すように心得るべし」としたためていました。有名な狂歌「泰平の眠りを覚ます上喜撰たった四杯で夜も寝られず」でうたわれた緊張感が伝わってきます。一方、翌年の2度目の来航時には、「初めの程は敵のように思いし異人」が滞在40日にもなり、地元住民らとも交流。ついには「楽しみ心解け合い、今別れと聞けば懐かしく思ふ」となったことが庶民の日記からわかります。恐怖心から好奇心へ、さらに友好へと変わっていく様子が見てとれます。
膨大な資料収集の集大成講座
1854年に日米和親条約が締結された場所にある横浜開港資料館に西川さんを訪ねました。開館したのは1981年。西川さんはその3年ほど前の開館準備段階から、国内の資料集めに奔走してきました。「ペリー来航から関東大震災のころまでのいろいろな資料を集めるのが、この博物館の役割です」
古い資料があるといった話をもとに各地を訪ね、蔵の中で100年以上も開けたことのない長びつに眠っていた「掘り出し物」が見つかったりします。そうした資料を、風を通して乾燥させ、1点ずつ封筒に入れて整理します。「学芸員というと展示だけをやっているように思われるかもしれませんが、日常的には資料を借りてきて整理して、という作業を毎日やっています」

そうやってこつこつと集めた資料をもとに、西川さんは横浜教室でもこれまでに、新着資料を中心に紹介する講座を開いてきました。今回のシリーズ講座は、膨大な資料をもとに通史的に構成しました。「開港資料館でやってきた仕事の集大成の講座です」
「有名人の歴史というのも皆さん興味があるのですが、その時の一般の人、とくに地元でどうだったかというのも、歴史好きの人たちに関心があります」「今やっている戊辰戦争でも、鳥羽・伏見の戦いがあり、勝海舟と西郷隆盛の話もありますが、そのとき横浜の人がどうだったのか。それを知るには、地元の人たちの日記や絵が中心になります。そこが他の講座とは違う特別なものになっていると思います」
特別展「ペリーとのつながり」
講座は、ペリー来航の後、諸外国と通商条約を結んで、多種多様な国民が交流するようになった横浜の姿や、浦賀奉行所の人々の様子などを紹介。8月の講座は「戊辰戦争を戦った武士たち」、9月は「明治維新と没落した武士たち」がテーマです。10月以降も、幕末から明治初期にかけての横浜を浮世絵や古写真、地図で紹介し、さらに近代化が進む日清戦争のころまで追う予定です。
西川さんは「地元に根ざした資料はおもしろいこと間違いないです」と言います。

横浜開港資料館では折しも、ペリー横浜来航170年に合わせた特別公開「横浜とペリー提督とのつながり」を9月1日まで開催。ペリーを先頭に上陸する様子を描いた「ペリー提督・将兵の横浜上陸図」は2016年の修復後初めて実物が公開されました(実物展示は7月で終了し、8月18日までは横浜市歴史博物館で公開)。黒船8隻が沖合に並び、見物の地元住民も大勢描かれています。そのほか、ペリーから贈られた時計や「ペリー提督日本遠征記」などペリー関係の資料が一堂に集められました。「ペリー上陸地点で、170年前の歴史を振り返ろうというのが狙いです」
講師プロフィール

西川 武臣(にしかわ・たけおみ)
1955年愛知県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。博士(史学)。現在、横浜開港資料館館長。専門は日本近世・近代史。著書に『横浜開港と交通の近代化-蒸気船・鉄道・馬車をめぐって』(日本経済評論社)、『幕末明治の国際市場と日本-生糸貿易と横浜』(雄山閣)、『ペリー来航』(中公新書)など。
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この連載について
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