かつて「東側」と呼ばれた国々は戦後どのような歩みを辿ったのでしょうか。民主主義や資本主義、「西側」の価値観を自明としてきた現代世界に揺らぎが生じる今、「東側」諸国の視点から、その実像に迫ります。5名の講師陣によるシリーズです。 ### 戦後日本にとっての「ソ連」 講師:駒澤大学教授 加藤 聖文 米ソ冷戦下でソ連の隣国に位置し、領土問題を抱えながらも日本にとってソ連は遠い存在でした。また、アジアにおいてはソ連と同じ共産陣営に属する中国という特異な存在がありました。アジアにおいてはヨーロッパと異なり、「米ソ冷戦」は複雑な構造を持っていたのです。この講義では、日ソ復交からソ連崩壊までの日ソ関係を当時の社会意識を交えながら考えて行きます。 ### ソ連・ロシアでシベリア抑留はどう語られているか 講師:関東学院大学准教授 小林 昭菜 ウクライナ戦争の影響で良好とは言い難い日本とロシアの関係が続いて久しい状況ですが、戦後から今日まで、日ソ(日ロ)はさまざまな課題を抱えてきました。そのうちの一つに、戦後60万人以上がソ連へ移送・抑留された、いわゆる「シベリア抑留」があります。シベリア抑留はなぜ起き、この歴史がソ連・ロシアでどう語られてきたのか。講演では、ロシア市民のエピソードなどを交えながら、お話していきます。 ### 東欧の戦後と社会主義の過去 講師:津田塾大学学芸学部教授 吉岡 潤 第二次世界大戦後、東欧諸国ではソ連の影響下に社会主義政権が樹立されました。東欧の社会主義体制が形成され展開していく過程は、冷戦構造の生成と存続、さらにはその動揺と終焉とに深く関わることになります。また、社会主義の過去は、現在もなお東欧の政治、経済、社会、文化に少なからぬ影響を与えています。冷戦構造の東側、旧社会主義圏を構成した東欧諸国の過去と現在を、ポーランドを中心に考えます。 ### 北朝鮮の文化外交史―1970〜1990年の日朝交流を中心に― 講師:摂南大学国際学部国際学科准教授 森 類臣 日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、1950年代後半〜1990年代初めに渡って文化交流を続けてきた。戦後、冷戦が本格的に始まる中で日朝の関係改善は進まなかったが、1955年に鳩山一郎首相(当時)が日朝関係改善の談話を発表すると北朝鮮側がそれに応答し、文化交流・経済交流(貿易)を主とした日朝関係が徐々に構築された。文化交流分野では学術・芸術・スポーツなどの分野で日朝文化交流が多層的に行われた。このような動きは、日朝間の独自の論理が働いた結果であったが、一方で、北朝鮮側から見ると、北朝鮮の国際関係観や諸外国との対外政策に位置づけられるものであったともいえる。 今や2002年9月の日朝平壌宣言から四半世紀が経とうとしている。しかし、日朝は没交渉状態であり懸案問題解決の道筋は見えず時間だけが経過しているようだ。ここで一度立ち止まり、文化外交を事例に、北朝鮮の対外関係、特に対日関係の歴史を振り返ってみたい。 ### 社会主義国家でどう暮らすのか―東ドイツの家族政策にみる労働・育児・日常生活 講師:早稲田大学人間科学学術院准教授 伊豆田 俊輔 冷戦時代の旧東ドイツ(1949-90)は、政治的には社会主義統一党という共産主義政党による独裁体制下にありました。しかしその一方で、この体制は女性の就労促進、保育施設の整備、出産・育児支援などを通じて、党・国家主導による「女性解放」を進めてもいました。こうした政策は、社会主義の理念を体現すると同時に、労働力不足や少子化への対応策でもありました。 本講演では、こうした東ドイツにおける労働・家族・日常生活をめぐる達成と限界をたどり、冷戦期東側社会の実像に迫ります。
加藤 聖文:かとう・きよふみ 駒澤大学教授 1966年愛知県生まれ。2001年早稲田大学大学院文学研究科史学(日本史)専攻博士後期課程修了。現在、駒澤大学教授。専攻は日本近現代史、東アジア国際関係史、アーカイブズ学。主な著書に、『「大日本帝国」崩壊』(中公新書)、『満蒙開拓団』(岩波現代全書)、『国民国家と戦争 挫折の日本近代史』(角川選書)、『満鉄全史』 (講談社学術文庫)、『海外引揚の研究 : 忘却された「大日本帝国」 』(岩波書店)ほか。
小林 昭菜:こばやし・あきな 関東学院大学准教授 主要著作『シベリア抑留 米ソ関係の中での変容』岩波書店、2018年、"From Japanese Militalism to Soviet Communism The 'Change of heart' of Japanese POWs through Soviet Indoctrination." Chapter 6, 2023, Routledge. (Competing Imperialism in Northast Asia New Perspectives, 1894-1953. Edited by Aglaia De Angeli, Peter Robinson, Peter O' Connor, Emma Reisz, Tsuchiya Reiko) 、「ロシアから見たウクライナ問題」『アジアアフリカ研究』62(4)2022年、1−13頁。
吉岡 潤:よしおか・じゅん 津田塾大学学芸学部教授。1969年京都府生まれ。京都大学博士(文学)。専門はポーランド現代史。主な著作に『[新版]戦うポーランド——第二次世界大戦とポーランド』(群像社、2026年)、『ポーランドの歴史を知るための56章【第2版】』(共編著、明石書店、2024年)、「ヨーロッパの歴史認識をめぐる対立と相互理解」(『岩波講座世界歴史1——世界史とは何か』岩波書店、2021年)ほか。
森 類臣:もり・ともおみ 摂南大学国際学部国際学科准教授。博士(メディア学)。専門分野は歴史社会学・地域研究(韓国・朝鮮)・東アジア国際関係。著書に『ようこそ韓国・朝鮮世界へ』(長澤裕子編、昭和堂、2026年、共著)、『北朝鮮を解剖する 政治・経済から芸術・文化まで』(礒ア敦仁編著、慶應義塾大学出版会、2024年、共著)、『韓国ドラマの想像力 社会学と文化研究からのアプローチ』(人文書院、2024年、共著)、『韓国ジャーナリズムと言論民主化運動―「ハンギョレ新聞」をめぐる歴史社会学』(日本経済評論社,2019年、単著)などがある。
伊豆田 俊輔:いずた・しゅんすけ 早稲田大学准教授 早稲田大学第一文学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学、博士(学術) 獨協大学外国語学部で講師・准教授を経て、現在早稲田大学・人間科学学術院准教授 著書:共著に水野博子/川喜田敦子編『ドイツ国民の境界』(山川出版社)、訳書にシュテファン・クロイツベルガー『ドイツ・ロシアの世紀1900-2022』上下(白水社)、ウルリヒ・メーラート『東ドイツ史1945-1990』(白水社)など
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・教室でもオンライン(Zoomミーティング使用)でも受講できる自由選択講座です。講師は教室に出講予定、第4回のみオンライン出講予定です。見逃し配信(2週間限定)はマイページにアップします。 お問合せ先: asaculonline001@asahiculture.com ・当日は教室案内掲示をご確認ください