近代以前の神社の多くは、境内に塔やお堂が建っていたり、その管理経営を僧侶が行っていたりする〈神仏習合〉でありました。ところが、明治維新のとき、そのような状態は本来の神社の姿ではないと強制的な排除が行われました。これが神仏分離です。しかしながら6世紀の仏教伝来よりこのかた、日本のカミへの信仰は仏教との関係のなかで展開してきたのでした。神社・神道の歴史のほとんどが神仏習合の歴史であって、現在の私たちが見ている神社の景観は、わずか百数十年を経たものに過ぎません。そこで本講座では、伊勢神宮・出雲大社・八幡宮(宇佐、石清水、鶴岡等)・春日大社という代表的な神社・祭神を取り上げ、それらと仏教との関わりを通して、神仏が織りなす日本の豊かな宗教文化を考えたいと思います。(講師・記) ◎本講座は3ヵ月に1回のペースで開講予定です <今期テーマ> 第2回 出雲大社―インドから漂着した聖地 中世においては、出雲大社(杵築大社)もまた仏教と深く結びついていました。そのことを象徴するのが、大社のある出雲半島はインドの霊鷲山(りょうじゅせん)の一部が漂着してきたのだという説話です。これは古代の「国引き」神話を中世に作り変えたもので、出雲の地が最初から仏教の聖地だと説いているのです。このような「神話」を伝えているのが、同じく出雲半島にある鰐淵寺(がくえんじ)で、かつて出雲大社と一体とされた寺院です。この当時、大社の祭神はスサノオでしたが(現在はオオナムチ〔オオクニヌシ〕)、鰐淵寺はスサノオと同体と考えられていた蔵王権現の霊場だったのです。第2回目は、出雲大社と鰐淵寺との関係を軸に、神社と仏教について考えます。 【画像】説明:インドから流れ来る山を杵で築きかためるスサノオ(出雲弥生の森博物館『もうひとつの出雲神話ー中世の鰐淵寺と出雲大社』2013年 より転載) <年間のテーマ> 2026年春開催 第1回 伊勢神宮―大日如来の化身、アマテラス 2026年夏開催 第2回 出雲大社―インドから漂着した聖地 2026年秋開催 第3回 八幡宮―八幡大菩薩の全国展開 2027年冬開催 第4回 春日大社―春日野に拡がる浄土
伊藤 聡:岐阜県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程満期退学。博士(文学)。茨城大学人文社会科学部教授。専門は日本思想史、特に中世神道、神仏習合思想。主な著書に『中世天照大神信仰の研究』法藏館 2011(第34回角川源義賞)、『神道の形成と中世神話』吉川弘文館 2016、『神道の中世―伊勢神宮・吉田神道・中世日本紀』中公選書 2020、『日本像の起源―つくられる〈日本的なるもの〉』角川選書 2021、『神道とは何か―神と仏の日本史 増補版』中公新書 2025がある。
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