明治維新(1868年)から昭和が終わるまで(1989年)は121年間ですが、その半分以上の64年間が昭和です(1926年12月25日から1989年1月7日)。それだけに日本の近代にとって昭和は特別な時代だったといえます。近年、昭和は「レトロ」として注目を集めていますが、戦前・戦中・戦後の3期それぞれに厳しいできごとが連なり、その中で生み出された建築はその時々の情報を集積して今に伝えています。 この講座では、明治維新から昭和、平成へと至る時の流れを経糸(たていと)に、建築が生まれた時代を緯糸(よこいと)として、そこに建築家が紡いだ建築を読み解いていきます。(講師:記) 【各回のテーマ】 1.大衆文化の興隆と昭和戦前の建築 明治維新から大正デモクラシーの時代を経て、大衆文化が花開いた時期に昭和が重なります。その時代の情報が集積する建築の一つが百貨店・デパートです。日本橋の老舗百貨店、モボ・モガが闊歩する銀座の百貨店、新興デパートの新宿伊勢丹など、百貨店には日本近代の情報が集積しています。同時に、昭和は情報化社会の始まりと軌を一にしており、欧米からもたらされた建築情報は昭和戦前の建築に大きな影響を与えました。昭和戦前の百貨店建築を中心に、世界の建築潮流もふくめて読み解いていきます。 2.戦時から戦後復興へ−建築家たちの昭和 大衆文化が開花した昭和戦前は、日本が戦争への傾斜を深める時代でした。ル・コルビュジエに代表されるモダニズム建築の流行に平行して、国威発揚の状況下で建築に「日本的」であることが求められました。モダニズムの白い箱形建築と日本的な建築の挾間で、ヨーロッパの建築の影響も受けながら建築家たちが生み出した作品を読み解いていきます。1945年8月の敗戦は、日本に民主主義社会への急激な転換をもたらしました。焦土と化した都市からの復興、続く1950年代以降の高度経済成長期に建築家たちが建築でめざしたものを読み解いていきます。 3.モダニズムからポスト・モダンへ 1960年代末になると、モダニズムの限界や終焉が世界的に叫ばれるようになります。その中で注目を集めたのが日本の建築でした。商業建築を中心としたポスト・モダンの建築は、装飾や歴史様式などを多用して独特の流行現象を生み出し、世界の建築に影響を与えたといわれています。その中で時流に左右されない建築を生み出した建築家もいました。昭和末から平成へと向かう建築の潮流を概観します。
沢 良子:東京造形大学副学長を経て現在日本高等教育評価機構副理事長。福島県会津若松市生まれ。武蔵野美術大学を卒業後早稲田大学へ進み、同大学院文学研究科芸術学(美術史)博士課程を単位取得退学。専門は1920〜30年代ドイツ及び日本の建築史、デザイン史。著書に『タウトが撮った日本』(武蔵野美術大学出版局)、『ふつうをつくる−暮らしのデザイナー 桑澤洋子の物語』(美術出版社)、『図説精読 日本美の再発見』(岩波書店)などがある。展覧会企画は、「東北へのまなざし1930−1945」(2022年)など。
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