維新期から戦前までの時期、国家神道、天皇崇敬、国体論が大きな役割を果たし、日本を軍国主義的、ひいては全体主義的な体制へと導いた。そこに宗教的な要素が濃厚に含まれていることは確かなところだ。ただ、宗教的とともにたいへん政治性が強いので、宗教=イデオロギーとして捉えるのが適切だろう。たとえば、教育勅語と御真影などを「国家神道」という語でくくってしまうと神道を広く取りすぎるとの批判が生じる。そこで、「国家神道、天皇崇敬、国体論」の複合体を考え、これらを近代天皇制国家を支えた宗教=イデオロギー複合として捉えていくのがよい。現行憲法はこうした体制の批判が一つの軸となって成立している。これに対して、憲法改正を唱え、男系の天皇を万世一系の伝統と捉えるのは、日本会議など現代の右派保守勢力だ。「国家神道、天皇崇敬、国体論」複合の理解を通して、近代天皇制の観念面からの理解を深めていくことが重要な所以である。(講師・記) (1)近代日本の国家と天皇崇敬システム――国家神道論再考@ (2)天皇制国家と宗教=イデオロギー――国家神道論再考A
島薗 進:専門は宗教学、死生学。1948年東京生まれ。上智大学グリーフケア研究所客員研究員、東京大学名誉教授。大正大学客員教授、龍谷大学客員教授、曹洞宗総合研究所講師、NPO東京自由大学学長。日本宗教学会元会長。宗教理論の研究、日本宗教史の研究、死生学、公共哲学、生命倫理などを研究領域とする。日本宗教学会賞、湯浅賞、朝日賞を受賞。著書に、『宗教学の名著30』、『いのちの始まりの生命倫理』、『スピリチュアリティの興隆』、『国家神道と日本人』、『日本仏教の社会倫理』、『日本人の死生観を読む』、『宗教を物語でほどく』、『いのちを“つくって”もいいですか?』、『ともに悲嘆を生きる』、『教養としての神道』、『死生観を問う』、『なぜ「救い」を求めるのか』などがある。
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