「地図」は土地の表情を映す鏡。人間の顔がみんな異なるように、それぞれの都市や地域は固有の「顔」を持っています。さまざまな表情を持ったそれらのエリアを時代で切り取った肖像が地図―とりわけ地形図で、明治期から今日まで多くの「肖像群」がこれまで蓄積されてきました。 本シリーズでは、各地方ごとに都市や田園風景、山岳地帯、そして鉄道や街道が形成する交通などに焦点を当てながら、いくつかの時代にわたる2万5千分の1または5万分の1地形図を通じて立体的に地域の表情を観察する試みです。ある地域では高度成長期に丘陵地が大規模に開発されて人口が急増する一方で、繁栄した鉱山都市がやがて衰退して森に戻ることもありました。歴史ある都市でも時代の流れに応じてその性格を一変させることも珍しくありません。地形図を深読みしながら日本と世界各地の変貌をたどってみましょう。 今学期は、中国・四国・九州編です。第1回は中国地方。古代は山陽道と山陰道にあたりますが、瀬戸内海に面した穏やかな気候で古くから水運が発達し、近現代には工業化が進んだ山陽地方、日本海側に面した自然に恵まれた地域であり、かつ出雲大社に代表される歴史ある山陰の地域の変遷を図上にたどります。第2回は四国地方で、瀬戸内海に面した香川県と愛媛県はそれぞれ「本四架橋」が結び、独自の発展を遂げた太平洋岸の高知県、名産の藍で大阪方面との結びつきが強い徳島県と、八十八か所の遍路道が結ぶ各地域を取り上げます。第3回は九州と沖縄です。古くは筑紫国、豊の国、火の国、そして薩摩、琉球王国など個性に満ちた各地域で、明治期からは石炭と鉄鋼の福岡、軍都の熊本と近代化が進み、苛烈な沖縄戦の後に占領時代を過ごした沖縄など、近現代に入って大きく変わったその姿を地図でたどります。(講師・記) *** 【カリキュラム(予定)】 <2026年1月期> 北海道・東北・関東編 第1回 北海道:開拓地とアイヌ語地名 第2回 東北:空が広い稲穂の国 第3回 関東・首都圏:巨大都市圏とその郊外 <2026年4月期> 中部・近畿編 第1回 北陸・甲信:雪国と晴れの国 第2回 東海:東海道新幹線に沿って 第3回 近畿・関西圏:古代史を今に伝える <2026年7月期> 中国・四国・九州編 第1回 中国:穏やかな山並みと瀬戸内 第2回 四国:こんぴら道と深山幽谷 第3回 九州・沖縄:火の国から珊瑚礁まで <2026年10月期> 海外編 第1回 欧州:国それぞれの地形と記号 第2回 米国・カナダ:珍しい地形と広大な土地 第3回 中国・韓国・台湾:近隣のアジア *** 【広報画像】 @「松山」1:200,000帝国図(1916年製版) A「最新広島市街地図」(1925年発行)駸々堂 B「那覇市」(『日本地理大系』九州篇より付図)(1930年)改造社
今尾 恵介:(いまお・けいすけ)地図研究家。1959年生まれ。明治大学文学部ドイツ文学専攻中退後、出版社勤務を経て、1991年より鉄道・地図・地名等の執筆を開始。著書に『地図帳の深読み』(2019)帝国書院、『駅名学入門』(2020)中公新書ラクレ、『ゆかいな珍名踏切』(2020)朝日新書、『地名崩壊』(2019)角川新書、他多数。監修を務めた『日本鉄道旅行地図帳』(2008〜)新潮社 が大ヒット。2018年に交通図書賞(交通協力会)、2019年に学会賞(日本地図学会)、2020年に日本地理学会賞を受賞。現在、(一財)日本地図センター客員研究員。日本地図学会評議員。『タモリ倶楽部』など、テレビ出演も行っている。
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