4〜5世紀の朝鮮半島は、高句麗・百済・新羅・加耶が多国間戦争を繰り広げた戦いの舞台でした。この激動の時代に、渡海して戦列に加わった「倭軍」はどのような存在だったのでしょうか。 これまでの古代史・考古学研究では、古墳時代の大刀や甲冑の増加などを根拠に、倭軍は「白兵戦を得意としたものの、高句麗の重装騎兵には時代遅れで太刀打ちできず、百済や加耶に雇われた劣悪な傭兵に過ぎなかった」という見方が有力でした。しかし本当にそうだったのでしょうか。軍事史学的な観点に立てば、軽装備の歩兵が重装騎兵に接近戦を挑むというのは、極めて拙劣な戦術といえます。 本講では、武装システムに対する考古学的な分析に加えて、軍事学の基礎理論やヨーロッパ中世軍事史との比較に立脚することによって従来の定説を根底から見直し、卓越した海洋機動力と長大な倭弓を巧みに駆使して強大な敵に対抗した「軽装弓歩兵」の戦術的優位性を明らかにし、それを通して古代倭軍の真の姿に光を当てていきます。 第1回 律令軍制と弓―古代日本軍事システムの到達点とその特異性 第2回 倭人と倭弓―弥生社会の誕生と海洋民の広域ネットワーク 第3回 高句麗重騎兵との死闘―倭の海洋機動弓兵とその戦闘教義 第4回 東国舎人騎兵の誕生―王権直属の親衛騎兵はいかに成立したか 第5回 白村江の戦いと壬申の乱―海洋戦略の破綻と東国騎兵の活躍
岡安 光彦:おかやす・みつひこ。1951年栃木県栃木市生まれ。軍事考古学者。明治大学大学院(考古学専攻)・奈良先端科学技術大学院大学(情報システム学専攻)修了。民間企業の文化財調査部門に席を置き、先端科学技術を導入した発掘調査の民営化を推進してきた。日本考古学協会会員、元大阪大学非常勤講師、NHK「歴史探偵」解説者。「原始和弓の起源」「アジアから来た戦争と北極圏の弓」「壬申の乱の兵器と兵士」など古代の騎兵や武器、軍事史に関する多くの論文がある。
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