あらゆる「うた」の核心には「抵抗」(プロテスト)の心がある。日本語の「うたう」は「うったう」とおなじ根を持った古い言葉であり、ままならぬ状況を訴え、自己の尊厳を世界に向けて主張することであった。それは「うつ」(打つ)という言葉とも響き合い、うたは現実を「打ち」「叩く」ことで世界を揺るがし、世直しを図ろうとする方法でもあった。権力者を批判しながら直接的に歌われる政治的プロテスト・ソングだけでなく、自己や自分が属する人々の生きる様を冷徹に歌うことで、民衆の「うた」はおのずから強い批判性と諷刺性を示してきた。 アメリカはそんなプロテスト・ソングの一つの聖地である。黒人霊歌からダドリー・ランドール、ピート・シーガー、ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーンまで、アメリカの吟遊詩人とバラッド歌いたちの系譜をたどりながら、さらに「アメリカ国家」に隷属してきたラテンアメリカや沖縄から生まれた真正なプロテスト・ソングについても語りたい。(講師・記)
今福 龍太:いまふく・りゅうた 文化人類学者・批評家。奄美自由大学主宰。詩誌『KANA』同人。著書に『ミニマ・グラシア』『薄墨色の文法』(岩波書店)『レヴィ=ストロース 夜と音楽』、『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』(みすず書房)『宮沢賢治 デクノボーの叡智』(新潮選書)『ぼくの昆虫学の先生たちへ』(筑摩書房)など多数。主著『クレオール主義』『群島-世界論』を含む著作集《パルティータ》(全五巻、水声社)が2018年に完結。
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