『ニュームーンのエミリー』(1923)は、モンゴメリの実像が色濃く投影された名作ですが、『赤毛のアン』の人気の陰に埋没し、その真価は長らく正当に評価されてきませんでした。しかし1985年、モンゴメリが生涯にわたって綴り、死後50年近くも秘密にされてきた日記が公開され始めると、『エミリー』はまるで100年の眠りから目覚めたかのように輝き始めたのです。この作品は、「これからは日記を書くつもり。そうすれば、死後に出版されるかもしれないから」という言葉で終わっています。これには、亡き父親宛てに書いていた手紙の代わりに日記を書く、という文字通りの意味の他に、自身の日記が将来出版されるように、というモンゴメリの願いが込められているのです。いま私たちは、そのモンゴメリの願いが成就したことを目の当たりにしています。100年後の読者に向けてモンゴメリが発したメッセージを汲み取りながら、作者自身が傑作と自負した『ニュームーンのエミリー』とその続編を、『エミリー』誕生の郷リースクデールやモンゴメリの日記を紹介しつつ読み解きます。
桂 宥子:岡山県立大学名誉教授 岡山県立大学名誉教授。専門は英語圏児童文学及び建国期のカナダ文学。著書に『アリス紀行』(東京図書)、『L.M. モンゴメリ』(KTC中央出版)等、訳書に『モンゴメリ日記』(立風書房)、『レッド・フォックス』(福音館書店)ほか多数。
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