1990年代、私たちは物事や社会の急速なデジタル化を目の当たりにした。その渦中で、私が考察を重ねた論考は、2002年に『デジタルを哲学する──時代のテンポに翻弄される<私>』として一冊にまとめられた。これらの論考から、「デジタルに埋没する写真」「ネットが崩す公私の境」「チェスでヒトは敗れたのか」「自動機械が問う<生命>」など、10編以上が高校の『国語』や『現代文』の教科書に掲載され、今日に至るまで多くの高校生に読み継がれている。 本講座では、あらゆる側面でデジタル化が「完成」したかのように見える現代を、四半世紀前の「黎明期」の視点から深く照射することで、その本質を浮き彫りにする試みである。今や当然とされているデジタル時代の事態が、一体どのようにして成立し、何と引き換えに形作られたのかを、古典的・現代的な哲学的思考を手がかりに、改めて深く探求する。(講師・記) *****予定テーマと哲学的視座(全六回) 本講座では、デジタル化の核心に迫る以下のテーマについて、示唆に富む哲学者たちの視座を通じて多角的に考察する。(順不同) 1 超監視社会と私:パノプティコンと身体の行方 * 哲学的視座:ミシェル・フーコーと「パノプティコン」 2 写真のデジタル化:「決定的瞬間」の喪失 * 哲学的視座:ヴァルター・ベンヤミンと「アウラの喪失」 3 「知」の情報化:屹立する<私>から情報資本主義の一コマへ * 哲学的視座:テオドール・W・アドルノと「啓蒙の弁証法」 4 ネットが崩す公私の境:著者からネットの発信者へ * 哲学的視座:フリードリヒ・ニーチェと「著者性の崩壊」 5 チェスでヒトは敗れたのか:人間の直観力とアルファ碁 * 哲学的視座:ブレーズ・パスカルと「繊細の精神」 6 「環境にやさしい」の裏側:隠蔽された「人間中心主義」 * 哲学的視座: マルティン・ハイデッガーと「世界像の時代」
黒崎 政男:1954年仙台市生まれ。哲学者。東京女子大学名誉教授。東京大学大学院博士課程(哲学)満期修了。専門はカント哲学。 人工知能、電子メディア、カオス、生命倫理など現代的諸問題を哲学の角度から解明している。NHK Eテレ「サイエンスZERO」(2003-12年)やNHK BS2「熱中時間〜忙中“趣味”あり〜」(2004-10年)にレギュラー出演するなど、テレビ、新聞、雑誌など幅広いメディアで活躍。著書に『今を生きるための「哲学的思考」』(日本実業出版社)、『身体にきく哲学』(NTT出版)、『デジタルを哲学する』(PHP新書)、『カント「純粋理性批判」入門』(講談社選書メチエ)、『哲学者はアンドロイドの夢を見たか』(哲学書房)など多数。
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