「つれづれなるままに、日ぐらし、硯(すずり)にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」と、『徒然草』は書き始められます。なすこともなく、日がな一日、心に浮かんでは消えていくたわいもないことを書きつけたというのです。南北朝時代(14世紀)の、吉田兼好という僧の随筆です。京都仁和寺のある双ヶ岡(ならびがおか)に庵を構え、世の中のさまざまな動静や自らの思いを書き留めました。身辺のこと、有職故実、社会生活の姿、ときには政治への批判もあり、おだやかな口調ながら、鋭い筆鋒で記してもいきます。当時の人々の姿が生き生きと語られ、今日にも通じる内容としてとても興味深い内容になっています。室町から江戸時代、さらに現代にいたるまで、広く人々に読み継がれる人気のある文学作品を、おもしろく楽しく読み味わうことにします。
伊井 春樹:大阪大学名誉教授 1941年生。広島大学大学院博士課程修了、文学博士。大阪大学大学院教授、人間文化研究機構理事、国文学研究資料館館長、逸翁美術館理事、逸翁美術館館長を経て現職。著書に『一千年目の源氏物語』『世界が読み解く日本』『ゴードン・スミスの見た明治の日本』『源氏物語を読み解く100問』ほか多数。
Vimeoを使用したオンライン受講の申し込みページです。教室受講をご希望の場合は別の当該講座紹介からお申込みください(講師は教室)。見逃し配信(2週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline009@asahiculture.comで承ります。