宇宙で観測されるブラックホールの多くは高速回転しています。本講座(全4回)では、回転する"時空の渦"カーブラックホールを題材に、引きずられる光の軌道、二つの地平面の存在、そして面積定理に代表されるブラックホール熱力学までを、図と数式を交えて解説します。前回シリーズ(一般相対性理論とブラックホール)の復習も随時挟みます。朝日カルチャーセンターで、数学と物理を駆使してブラックホールが見せるダイナミックな宇宙像の深淵にどこまで迫れるか――。一緒に挑戦してみませんか。(講師・記) <カリキュラム(予定)> ### 第1回: カー時空(1) 回転するブラックホール ◆観測データ(EHT画像・重力波・X線連星)の具体例を挙げ、「多くのブラックホールは高速で回転している」ことを示す。 ◆回転が加わると現れる独特の領域(エルゴ領域など)を紹介し、静止ブラックホールとの違いを実感する。 ◆ブラックホールの回転エネルギーを取り出せる可能性など、天文学の夢に触れ、学習動機を高める。 ### 第2回: カー時空(2) 時空の引きずり ◆ブラックホールの回転が周囲の時空そのものを「引きずる」現象(フレームドラッギング)を説明する。 ◆光や粒子の軌道がブラックホールの回転によってどのように変わるかを、シュバルツシルトの場合と比較しながら直感的に理解する。 ◆時空のねじれを利用したエネルギー増幅メカニズム(ペンローズ過程・超放射)を紹介。 ### 第3回: カー時空の因果構造とペンローズ図 ◆カーブラックホールが「外側」と「内側」の二重の境界を持つことを示し、その物理的意味を掴む。 ◆時空の可視化であるペンローズ図の描き方を解説し、光や情報がどこまで届くかを理解する。 ### 第4回: ブラックホール熱力学 ◆ブラックホールと熱力学の不思議な関係を説明する。 ◆ブラックホールの面積定理を、エントロピー増大則との対比で直感的に理解する。
諏訪 雄大:東京大学大学院総合文化研究科准教授 1983 年生まれ。東京大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、京都大学基礎物理学研究所特定研究員および特定准教授、京都産業大学准教授を経て東京大学総合文化研究科准教授。おもな研究分野は高エネルギー天体物理学。とくに、超新星爆発・ガンマ線バーストなどの爆発的天体現象や中性子星・ブラックホールなどの高密度天体およびマルチメッセンジャー天文学。
※講座は14:30までですが、質疑応答で延長する可能性があります。予めご了承ください。
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