国文学と民俗学とを交差させ、独自の「古代」研究を作り上げた折口信夫の代表論のひとつに「水の女」という論文があります。古代における「皇后の起原」「きさきと言ふ語の解決」を目指したこの論において、折口は日本の古代の皇妃の出自には他氏族出身である「水の女」と皇族出身の「ひるめ(日の女)」があり、それぞれ別の役割でもって天皇に奉仕していたと述べています。 確かに、「神武皇后」媛蹈鞴五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ)や「仁徳皇后」磐之媛命(いわのひめのみこと)、「安閑皇后」春日山田皇女など、天皇に遜色ない存在感を放つキサキたちが『日本書紀』の語る歴史の上でそれぞれの立場で重要な役割を担っているように思われるのです。 「水の女」という語を手掛かりに、『日本書紀』の歴史叙述を一緒に読み解いていきましょう。(講師記) *2025年10月開講。*1年12講。 【各回の講義内容】 ※今期の範囲=◆ ◆第一回:導入―「水の女」論を手掛かりに― ◆第二回:媛蹈鞴五十鈴媛(ひめたたらいすずひめ)―神武天皇皇后― ◆第三回:狭穂姫(さほひめ)と日葉酢媛命(ひばすひめのみこと)―垂仁天皇皇后― 第四回:気長足姫尊(おきながたらしひめのみこと)―仲哀天皇皇后― 第五回:磐之媛命(いわのひめのみこと)と八田皇女(やたのひめみこ)―仁徳天皇皇后― 第六回:草香幡梭姫皇女(くさかのはたびひめのひめみこ)―雄略天皇皇后― 第七回:春日大娘皇女(かすがのおほいらつめのひめみこ)と手白香皇女(たしらかのひめみこ)―仁賢天皇皇后と継体天皇皇后― 第八回:春日山田皇女(かすがやまだのひめみこ)と橘仲皇女(たちばなのなかつひめみこ)―安閑天皇皇后と宣化天皇皇后― 第九回:広姫(ひろひめ)と豊御食炊屋姫尊(とよみけかしきやひめのみこと)―敏達天皇皇后― 第十回:穴穂部間人皇女(あなほべのはしひとのひめみこ)―用明天皇皇后― 第十一回:宝皇女(たからのひめみこ)と間人皇女(はしひとのひめみこ)―舒明天皇皇后と孝徳天皇皇后― 第十二回:鸕野讚良皇女(うののさららのひめみこ)以降―『日本書紀』編纂時のキサキ―
吉原 美響:よしはら みお 上智大学文学部史学科卒業。東京都立大学大学院人文学研究科修士課程、博士後期課程修了。博士(文学)。古代文学会会員、日本文学協会会員。「雄略天皇と少子部連蜾蠃 : 雄略紀七年秋七月条を読む」(『日本文学72(2)』)、「大悪天皇と有徳天皇のあいだで:雄略紀三年夏四月条の「譖」と「流言」と」(『古代文学63』2024年3月)がある。
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