冬を前に、いまはタネたちの旅立ちの季節。大地に根を下ろして動かない植物も、タネという時空間移動カプセルを利用して、新しい場所に移動し、生育に不適な時間を飛び越えて芽を出します。タネは小さくとも全遺伝情報を備え、丈夫で乾燥にも強く、空を飛んだり動物にくっついたり、柔らかな果肉の奥にそっと隠れたりして、巧みに旅をしています。何年も何十年も休眠してから芽を出すことも。私のコレクションから、よりすぐりのタネや実を持っていきます。観察や実験も交え、タネたちの旅の知恵を探りましょう。(講師記) .
多田 多恵子:ただ・たえこ 植物学者 東京生まれ。東京大学卒、理学博士。専門は植物生態学。 いつもワクワクしながら、植物の繁殖戦略や動物との相互関係を追いかけている。東京農工大非常勤講師。NHKラジオ子ども科学電話相談の回答者。2021年度松下正治記念賞受賞。2022年日本植物学会特別賞受賞。広く自然の面白さを伝えたいと観察会などでも活動中。著書に「美しき小さな雑草の花図鑑」(山と渓谷社)、「したたかな植物たち」(ちくま文庫)、「旅するタネたち」(山渓文庫)、「図鑑 NEO 花」(小学館)、「実とタネ・キャラクター図鑑」(誠文堂新光社)、「びっくり まつぼっくり」(福音館書店)、「道草ワンダーランド」(NHK出版)など多数。NHK・Eテレ「趣味どきっ!」番組枠で、2021年秋放送の「道草さんぽ」と続編で2023年春放送の「道草さんぽ・春」はともに好評を博し、それぞれ2023年秋と2024年春にアンコール放送されました。
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