日本で最も古い歴史書「古事記」などが成立するより昔の古墳時代、ひとはどのように戦っていたのでしょう? 源平合戦をはじめとする中世の戦いについては、文献で一部をうかがい知ることができますが、それ以前の戦いや武人のいでたちについては、実はまだよくわかっていません。そんななか今回は、近年研究が著しい、当時の武器・埴輪・馬具・出土人骨などの研究をもとに、若手を含む気鋭の研究者たちが、古墳時代の武装と戦いの最前線に迫ります。(監修・宮代栄一朝日新聞編集委員) ■各回テーマと担当講師(予定) **○11月16日 「馬はいつやってきた? 古墳時代馬具からみた武装と戦い」** 宮代栄一 朝日新聞編集委員 【講師ひとこと】古墳時代の騎馬兵はどんな出で立ちをしていたのでしょう。徒歩の兵とはどこが違ったのでしょうか。馬の文化から古墳時代の戦いを考えます。 **○12月21日 「刀はどう使われた? 古墳時代の金銀装大刀の意味するもの」** 大谷晃二 松江市立皆美が丘女子高等学校教諭・日本考古学協会会員。 【講師ひとこと】古墳時代後期の金銀で飾ったさまざまな種類の大刀は何を意味するのでしょうか。どこで作り、誰が配り、どんな人が身に着けていたのか。デザインや製作技術の細部など、大刀の見どころを紹介しながら考えていきます。 **○1月18日 「矢じりのカタチはなぜ違う? 弓矢からみた古墳時代の実相」** 平林大樹 千曲市歴史文化財センター主査 【講師ひとこと】鉄鏃は小さくて目立たない武器ですが、そこに含まれる情報は膨大です。鏃のデザインはなぜ変化するのでしょう。地域によってカタチが異なるのは何を意味するのかを考えます。 **○2月15日 「埴輪の武人ってどんな人? 古墳時代の武器・武具形埴輪から考える」** 青笹基史 埼玉県教育局文化財・博物館課主任 【講師ひとこと】古墳時代の埴輪は、モデルとなった実物をかなりデフォルメして表現していますが、当時存在しなかったものなどは、埴輪にはしていません。埴輪にみられる武装具の表現から古墳時代の戦いについて考えます。 **○3月15日 「戦争はいつ始まった? 戦いの傷は見分けることができるのか」** 谷畑美帆 明治大学文学部兼任講師・同黒耀石研究センター客員研究員 【講師ひとこと】狩猟採集から稲作へと生業形態が変化することによって、平和な縄文時代から一変して戦争が生じたと考えられています。これは、弥生時代の一部の遺跡からは傷を持つ人骨が出土するようになるからなのですが、縄文時代の人骨にも傷の痕跡は確認されています。人骨の傷から何が導き出せるのかを考察します。
宮代 栄一:みやしろ・えいいち。1963年、群馬県生まれ、東京育ち。明治大学大学院文学研究科博士後期課修了(博士・史学)。89年に朝日新聞社に入社。川崎支局、福岡本部学芸部、東京本社学芸部などをへて、同社編集委員。記者として文化財や考古学、歴史などに関する記事を執筆するかたわら、古墳時代の馬具に関する論考を50本以上執筆してきた。主な研究テーマは古墳時代の馬装復元と古墳時代馬具の地方生産。論文に「埴輪の馬装と現実の馬装」、共著に『金鈴塚古墳と古墳時代社会の終焉』(六一書房、2022年)、『空白の日本古代史 』(宝島新書、2022年)、『最新DNA研究でここまでわかった! 日本人の起源』(TJMOOK、2025年)ほか。
青笹 基史:埼玉県教育局主任 早稲田大学大学院修士課程修了。行政職・学芸員として文化財や博物館、考古学などに関する業務に従事するかたわら、埼玉県域を中心に埴輪や武装具に関する論文を執筆してきた。
平林 大樹:千曲市歴史文化財センター主査 静岡大学大学院修士課程修了。長野県千曲市で文化財活用業務に従事するかたわら、地域的な視点から古墳に副葬される鏃(矢じり)のライフヒストリーとその背後にある社会構造、古墳時代の鍛冶などについて考えている。
谷畑 美帆:たにはた・みほ。明治大学文学部兼任講師・同黒耀石研究センター客員研究員。東京芸術大学大学院博士課程修了。博士(学術)。古墳時代の装身具研究を発端に、被葬者である人骨と墓から過去の社会様相を明らかにする研究を行っている。著書に『骨と墓の考古学』『コメを食べていなかった?弥生人』『O脚だったかもしれない縄文人』ほか。アウトリーチ活動として、古墳時代を舞台にした歴史小説『鈴鳴りの彼方で』を上梓した。
大谷 晃ニ:松江市立皆美が丘女子高等学校教諭・日本考古学協会会員。岡山大学大学院修士課程修了。高校教師をしながら出雲地方をフィールドとして横穴墓、須恵器編年などの研究に取り組み、近年では「古墳時代の金銀装大刀」についての論文を執筆する。
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