傑作小説『灯台へ』(1927)を中心にヴァージニア・ウルフ(1882-1941)を論じます。フェミニズムの観点から論じられることの多いウルフですが、ここでは、特に、彼女の父との関係に注目します。というのは、父レズリー・スティーヴン(1832-1904)は19世紀後半の英国を代表する知識人で、いくつかのアルプス初登攀の記録を持つ著名な登山家でもあり、先駆的な実存主義者でもあるのです。彼との関係の中でヴァージニア・ウルフ『灯台へ』を読むと、19世紀から20世紀にかけてのイギリス文学の霊性史がくっきりと浮かびあがります。昨年論じたジョイスやD・H・ロレンスとの差異や共通点も明らかになるでしょう。(講師・記) <カリキュラム(予定)> 第1回 「もの」の霊性史序論:紀元前のイオニア学派から 第2回 19世紀英国:ウルフの父レズリー・スティーヴンへ、そして、娘へ。『灯台へ』第1部。父と子と灯台 第3回 『灯台へ』第1部。妻の視点から見る「永遠に女性的なるもの」 第4回 『灯台へ』第2部とD・H・ロレンス『アーロンの杖』:「もの」、ピュシス、風/空気(プネウマとスピリトゥス) 第5回 『灯台へ』第3部。灯台へ行く:父と子の接続 第6回 『灯台へ』第3部。灯台に着く:石と岩の霊性
武藤 浩史:慶應義塾大学名誉教授 1958年生まれ。英国ウォリック大学博士課程修了(Ph.D.)、慶應義塾大学名誉教授。専門は、英文学・文化。著書:『「ドラキュラ」からブンガク』(慶應義塾大学出版会)、『「チャタレー夫人の恋人」と身体知』(筑摩書房)、『ビートルズは音楽を超える』(平凡社新書)。翻訳:D・H・ロレンス『息子と恋人』小野寺健と共訳(ちくま文庫)、『D・H・ロレンス幻視譚集』(平凡社ライブラリー)、マーガレット・ドラブル『昏い水』(新潮社)、サミュエル・バトラー『エレホン』(新潮社)ほか多数。
<テキスト>ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』御輿哲也訳(岩波文庫) ※各自ご用意ください。
【重要】講師都合により日程変更。11/11休講⇒11/25補講(9/4記)Zoomウェビナーを使用した、教室でもオンラインでも受講できる自由選択講座です(講師は教室で講義予定)。見逃し配信(2週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問い合わせは、yk9yokohama@asahiculture.comで承ります。