フランスは世俗的な国としても知られています。この特徴はフランス革命とそれにつづく19世紀の歴史のなかで大きく形づくられました。そのため、近代フランスの歴史は世俗共和政が確立する過程と理解されることが多く、そこでは宗教や教会は衰退を運命づけられた存在とみなされがちです。しかし実際には、宗教は随所で重要な役割をはたし、みずから近代化への適応を試みました。とくにカトリック教会は、学校教育や医療を支えただけでなく、民主政に参加し、都市化にも対応し、大衆メディアも活用しようとしました。そうした試みの多くは成功したとはいえないのですが、教会そのものを変えることにもつながりました。講座では、近世から現在に至るまでのフランス史をカトリック教会に注目してたどり、いくつかのトピックを手がかりにカトリシズムがどのような宗教であるのかについて考えてみたいと思います。(講師・記)全6講。 【各回の内容】 (1)近世フランス王国とカトリシズム (2)フランス革命と教会 (3)キリスト教民主主義の試み (4)都市化のなかの教会 (5)カトリシズムとセクシュアリティ (6)ラジオ宗教番組とミサのテレビ中継
長井 伸仁:東京大学教授 1967年生まれ。大阪大学文学部卒業。パリ第1大学博士課程修了、博士(歴史学)。徳島大学、上智大学を経て現職。専門はフランス近現代史。著書に『歴史がつくった偉人たち』(山川出版社、2007年)、『近代パリの社会と政治』(勁草書房、2022年)、共訳書にピエール・ノラ編『記憶の場』(岩波書店、2002〜2003年)、アズリア/エルヴュー=レジェ編『宗教事象事典』(みすず書房、2019年)など。
・11月と3月は変則週です。・Zoomウェビナーを使用した、教室でもオンラインでも受講できる自由選択講座です(講師は教室)。お問い合わせはyk9yokohama@asahiculture.comで承ります。