オースティンの小説におけるカントリー・ハウスは、単なる舞台としてだけはなく、物語の展開上の大きな役割を果たすことが多い。そこで、作品で描かれるカントリー・ハウスなどの屋敷や邸宅に注目し、それらがどのような意味合いを具体的に持っているのかを読み解いていきたい。 まず、イギリスにおけるカントリー・ハウスがどのようなものかを確認し、作者のオースティン自身と密にかかわった兄エドワードの邸宅チョートン・ハウスを紹介する。その後、オースティンの各作品でお屋敷や邸宅がどのように描かれているのかを丁寧に読んでいく。ノーサンガー・アベイ、『分別と多感』のノーランドとバートン・コテージ、『高慢と偏見』にはロングボーン、ネザーフィールド、ロージング、そしてペンバリー、それからマンスフィールド・パーク、『エマ』にはハートフィールド、ドンウェル・アベイ、ランドールズ、そして最後の作品となった『説得』のケリンチ・ホールとアパークロスなど。そしてこれらのひとつひとつに、富と権威のほか、愛すべきイングランド、守るべき道徳観(モラル)、理想的な家庭といった象徴的な意味が持たされていることを解説していく。 オースティン生誕250周年の今年に、実際のイギリスのカントリー・ハウスにも触れながら、彼女の作品における屋敷や邸宅に込められた意図を探ってみませんか。 (講師・記)
向井 秀忠:フェリス女学院大学教授 1964年生まれ。明治学院大学博士課程修了、フェリス女学院大学教授。専門は、英文学・文化。共著に、『ジェイン・オースティンの世界』(鷹書房弓プレス)、『ヴィクトリア朝の〈文芸〉と〈社会改良〉』(音羽書房鶴見書店)、『帝国と文化』(春風社)、『イギリスの文化 55のキーワード』(ミネルヴァ書房)ほか。翻訳に、オースティン『美しきカサンドラ』、ポール・ポプラウスキー『ジェイン・オースティン事典』(鷹書房弓プレス)、ヘンリー・マッケンジー『感情の人』(音羽書房鶴見書店)ほか。
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