1847年に出版された小説『ジェイン・エア』は主人公のジェインの一人称の語りで話が進む。ジェインは孤児で、親戚の家から追い出されて慈善学校で教育を受け、住み込みの家庭教師の職を得る。雇い主の紳士は魅力的だが影のある人物で、住んでいる館では時おり謎の笑い声や物音が聞こえてくる。この館、そして主人にはどのような秘密があるのか。一人の女性の成長物語にロマンスや恐怖、超自然の要素も加わったこの作品は出版当時、大きな反響を呼んだ。 講座では『ジェイン・エア』の物語を追いながら、当時のイギリスの社会、歴史、文化、階級についても考察していきたい。 (講師・記)
新井 潤美:あらい・めぐみ 東京大学大学院教授 東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士号取得(学術博士)。東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門はイギリス文学、イギリス文化、比較文学。主な著書に、『階級にとりつかれた人びと 英国ミドル・クラスの生活と意見』(2001)中公新書、『へそ曲がりの大英帝国』(2018)平凡社新書、『執事とメイドの裏表―イギリス文化における使用人のイメージ』(2011)白水社、『魅惑のヴィクトリア朝―アリスとホームズの英国文化』(2016)NHK出版、『パブリック・スクール―イギリス的紳士・淑女のつくられかた』(2016)岩波新書、『〈英国紳士〉の生態学―ことばから暮らしまで』(2020)講談社学術文庫、『ノブレス・オブリージュ―イギリスの上流階級』(2021)白水社、『英語の階級―執事は「上流の英語」を話すのか?』(2022)講談社選書メチエ。訳書に、ジェイン・オースティン著『ジェイン・オースティンの手紙』(2004)岩波文庫、他。