現代では、「戦後民主主義」は「終わったもの」とされがちです。ほとんど顧みられることもありません。しかし、そもそも「戦後民主主義」が何を指しているのか、誰もよくわからないまま、なんとなくこの言葉が使われているように思えてなりません。いったい「戦後民主主義」とはどのような概念なのか。それを踏まえておかないと、「終わった」とは言えませんし、そこから何を継承すべきなのかも見えてこないと思います。レクチャーでは、「戦後」と「民主主義」の関係を、社会の歴史と知識人たちの言論を中心に振り返ります。「戦後」とは何であり、「民主主義」とは何であるかを再考する作業になります。(講師:記) 第1回 敗戦・新憲法・社会運動:1945〜50年代 第1回では、敗戦から占領下、そして主権回復後の時代を扱います。焼跡からの復興を目指した当時の人びとにとって「戦後」とは、新たな苦難の始まりであると同時に、自由や民主主義という言葉を身に染みて感じられる時代でもありました。この時代の言論や社会運動を振り返ることで、「戦後民主主義」の始点の光を見極めます。 第2回 左右からの挟撃:1960年代〜70年代 第2回が扱うのは、高度経済成長期と、その後のいわゆる「低成長」の時代です。この時代、「戦後民主主義」は新左翼の若者たちからも、保守の政治家や知識人たちからも、批判の対象になります。そこで批判された「戦後民主主義」とは、要は戦後日本に支配的だった価値観を指す場合もあれば、日米安保体制を指すこともあれば、戦後知識人たちの啓蒙主義的姿勢を指すこともありました。なぜ、どのように「戦後民主主義」が批判され、その後の日本社会はどこに向かったのか、論じたいと思います。 第3回 「戦後民主主義」から遠く離れて?:1980年代以降 1980年代以降、各種社会運動は基本的には下火になり、「昭和」が終わり、自衛隊が海外に派遣されたりと、「戦後」の終わりが様々に議論されました。ところが、「戦後」が終わったのかどうかは、不明確なままです。21世紀に入ってからも、たとえば「戦後レジームからの脱却」というようなかたちで議論が起こることからもわかります。「戦後」という曖昧な概念は、曖昧なままに現代にまで生き残っています。第3回では、「戦後」が終わったのだとすれば、どの部分が終わったのか、どの部分が活きているのかを確認するために、80年代から現代までを概観します。
山本 昭宏:神戸市外国語大学准教授。1984年、奈良県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。文学(博士)。主著に『大江健三郎とその時代』(人文書院、2019年)、『戦後民主主義』(中公新書、2021年)、『変質する平和主義』(朝日新聞出版、2024年)など。
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