吉原の本屋から出版界のメインストリート日本橋に店舗を構え本格的に錦絵出版に乗り出した版元蔦屋重三郎は、寛政4,5年(1792、93)頃、喜多川歌麿の美人大首絵をヒットさせました。そして次に挑んだのが、寛政6年の東洲斎写楽による役者絵の出版でした。現代において写楽はなぜ「謎の浮世絵師」と称されるのでしょうか。寛政期(1789-1801)の役者絵出版の様相を背景に、写楽の生没年や経歴、異例に恵まれた役者絵デビュー、そして1年もしないうちに筆を折ったらしいこと…この絵師をめぐる謎をたどりつつ、その実像に迫ってみたいと思います。(講師:記) 東洲斎写楽筆《三代目大谷鬼次の江戸兵衛》大判錦絵 寛政6年 東京国立博物館蔵 出典:[国立博物館所蔵品統合検索システム](https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-471)
田辺 昌子:たなべ・まさこ 東京都生まれ。学習院大学人文科学研究科博士前期課程修了。永青文庫学芸員を経て千葉市美術館の開設に準備室段階から関わり、2024年3月まで千葉市美術館副館長を務めた。専門は浮世絵史。現在はフリーランス。国際浮世絵学会常任理事。2008年「鳥居清長」展図録で第20回國華賞展覧会図録賞(共同受賞)、2018年第34回國華賞、2024年「鳥文斎栄之」展図録で第36回國華賞図録賞(共同受賞)。主な著書に『浮世絵のことば案内』(小学館 2005年)、『鈴木春信 江戸の面影を愛おしむ』(東京美術 2017年)、『もっと知りたい 浮世絵』(東京美術 2019年) 、『もっと知りたい 喜多川歌麿』(東京美術 2024年) 、『浮世絵バイリンガルガイド』(小学館 2024年)、『もっと知りたい 蔦屋重三郎』(東京美術 2024年)など。日本伝統文化検定の「伝検公式テキスト」(2024年)浮世絵部分の著者。
筆記用具
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