本講座では、規範としての古典古代の遺産を端緒として、ルネサンスの古典復興、19世紀の新古典主義とロマン主義、そしてモダンの革新へと至る西洋美術の壮大な流れを、全12回にわたって追いかけます。 まず、第1回、2回で「古典古代の遺産」と「ルネサンスのはじまり」を取り上げます。中世の美術からいかにして古典の理想が再発見され、ルネサンスが花開いたのか。その源流と背景をひも解きながら、当時の画家や彫刻家たちの目指したものを探ります。 続く第3回、4回ではダヴィッドやアングル、ジェリコーやドラクロワを通じて、新古典主義とロマン主義の対立と交錯を見ていきます。ロココへの反動として生まれた古典回帰のエネルギーと、それに抗う社会変革の情熱を秘めたロマン主義。その時代の躍動感を描き出します。 第5回、第6回では、クールベのリアリズムとマネの体制と反体制のはざまに立つ姿を考察します。アカデミーの価値観やサロンの権威に挑戦する画家たちの視点が、西洋美術の潮流をいかに変えたのかを読み解きます。 そして後編の第7回、第8回では印象派のルノワールや新印象派のスーラ、そしてポスト印象派のセザンヌが登場します。光と色彩をめぐる実験と、ゾラとの友情がセザンヌに与えた影響など、芸術家同士の人間模様も織りまぜながらその革新性に迫ります。 第9回以降は20世紀の大きな転換点へと歩を進め、マティスとピカソが繰り広げた色と形の対話(第9回)や、デュシャンが提示したアルチザン(手技/手仕事)からの脱却(第10回)は、アヴァンギャルド芸術を象徴する出来事です。さらに、第11回のダリのシュルレアリスム、そして最終回のポロックの「ドリッピング」絵画に至るまで、モダンアートの流れがどのように刷新され、多様性を獲得していったのかを読み解きます。 こうした流れのなかで、芸術家たちは古典的規範を復興させ、抵抗し、あるいは変容させながらも、西洋美術の原点と絶えず対話してきました。本講座では、この「古典との対話」が形を変えながらもその根底に一貫して息づいているフロンティアを、全12回を通して明らかにしていきます。(講師・記) 【カリキュラム予定】 ■ 前編(今期:2025年4〜6月) 第1回 古典古代の遺産──西洋美術の原点をひも解く 第2回 ルネサンスのはじまり──中世から古典古代の復興へ 第3回 ダヴィッドとアングル──ロココに対する反動と古典への回帰 第4回 ジェリコーとドラクロワ──古典主義に抗う社会変革の情熱 第5回 クールベ──見たものしか描かないリアリズムの革命 第6回 マネ──体制と反体制のはざまで絵筆を握り続けた画家 ■後編(2025年7〜9月予定) 第7回 ルノワールとスーラ──光をめぐる闘争 第8回 セザンヌ──ゾラとの絆が残した光と影 第9回 マティスとピカソ──色と形が交錯するふたりの対話 第10回 デュシャン──アルチザンを放棄した創造のゆくえ 第11回 ダリ──偏執狂的発想がもたらす超現実の世界 第12回 ポロック──あまりにも短命な革命児
大澤 慶久:(おおさわ・よしひさ)武蔵野美術大学大学院修士課程、東京藝術大学博士後期課程、同大学大学院教育研究助手で培った学識を基盤に、作品・理論・社会的背景から芸術にアプローチ。大学院では、美術批評家の第一人者・藤枝晃雄、国立西洋美術館館長・田中正之に師事。現在、東京藝術大学・関東学院大学非常勤講師を通じて、次世代の研究者・芸術家の育成に尽力している。著書『高松次郎─リアリティ/アクチュアリティの美学』では、日本の現代美術を代表する作家、高松次郎の作品世界を分析。また、国際的な共著『Mono-ha and Attitudes』は、日本の現代美術を世界に発信する重要な試みとなる。
Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。見逃し配信(2週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。