アメリカの2期目のトランプ政権は、今までの民主主義や人権の積み重ねを覆すような政策を次々と打ち出し、世界を困惑させている。アメリカのみならず、フランス、ドイツなど民主主義のお手本とされた国々で、民主政治は深刻な危機に直面している。こうした現象は、2010年代から各国に広がった。日本も例外ではない。この講座では、この15年ほどの民主政治の衰弱について、経済、メディア、グローバル化などとの関連で考察し、民主主義の生き残り策を考えたい。(講師・記) *2025年4月開講。全6講。 <各回のテーマ> 1 世界における戦後民主主義 ・二度にわたる世界大戦の経験からの学習 ・経済発展と自由民主主義の安定 ・冷戦という相対的安定期 ・自由民主主義の勝利と限界 ・民主主義の諸前提 2 グローバル化と民主政治の変容 ・民主主義と国民国家の結びつき ・人の移動と国民の崩壊 ・人は他者に対してどこまで寛容になれるか ・経済的グローバル化と苛烈な資本主義の復活 ・格差拡大とポストデモクラシー 3 情報革命と民主政治の変容 ・公共空間とメディア ・インターネットをめぐる期待と危惧 ・民主政治に対するSNSの影響 ・伝統的メディアの衰弱と言論の変容 4 民主化と反動 ・民主化と民主主義 ・20世紀における民主主義の拡大 ・市民の拡大とアイデンティティ政治の隆盛 ・旧市民と新市民の対立 ・政治的正しさに対する反動 5 リスクと政治 ・政治の課題としてのリスク ・20世紀の福祉国家と典型的リスク ・グローバル化時代におけるリスクの変容 ・セキュリティ志向と権力の拡大 6 曖昧さと政治 ・民主政治における市民の選択 ・エリートに対する委任の崩壊 ・消費者モデルと民主主義 ・単純化と政治の困難
山口 二郎:やまぐち・じろう 法政大学教授 1958年岡山県生まれ。1981年東京大学法学部卒業後、東京大学法学部助手、北海道大学法学部助教授を経て1987年よりアメリカ・コーネル大学へ留学。1993年北海道大学法学部教授。1997年よりイギリス・オックスフォード大学に留学。2000−2004年北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター長。2005年よりイギリス、ウォーリック大学に留学。北海道大学公共政策大学院教授、北海道大学大学院法学研究科教授、パリ国立政治学院客員教授を経て、2014年4月より法政大学法学部教授。専攻は政治学・行政学。著書に、『ポピュリズムへの反撃』(角川書店)、『いまを生きるための政治学』(岩波書店)他多数。
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