大伴家持は、万葉歌人としてもっとも著名ですが、武門氏族として知られる「大伴氏の統領」としての顔を併せもつ政治家・軍人でもありました。政界からは反藤原氏の代表的存在とみられていて、橘奈良麻呂の変、氷上川継の事件、藤原種継の暗殺事件、そして、藤原仲麻呂暗殺未遂事件という政争に深く関わったことが、その証明となっています。 今回の講座では、藤原式家の祖である宇合の次男・藤原良継を介在者として、仲麻呂暗殺未遂事件に、家持がどうして、どのように、係わったのかをお話しします。『続日本紀』『万葉集』を史料としてみえてくる熾烈な権力闘争を、奈良時代政治史の研究者が解説します。
木本 好信:元龍谷大学特任教授 1950年兵庫県生。専門分野は日本古代政治史、特に奈良時代政治史、平安時代の公卿日記。主な著書に『日本評伝選・藤原仲麻呂―率性は聡く敏くして』(ミネルヴァ書房)、『律令貴族と政争』(塙書房)、『万葉時代の人びとと政争』(おうふう)、『平城京時代の人びとと政争』(つばら選書)、『歴史群像シリーズ 古代天皇列伝』(学研)、『総図解よくわかる天皇家』(共著、新人物往来社)等多数。