史料編纂所が編纂、刊行している『大日本史料』は、歴史的な人物が没すると「卒伝」というものを作成し、掲載します。これは「確実な史料」に基づく、その人物の伝記になります。これを見ると、世の中に流布している言説がいかに「あとづけ」であるかがよく分かります。もちろん、人物の評価は複数あってしかるべきです。ですが、虚像と実像の別は知っておいても損はないかな、と考え、本講座を開くことにしました。(講師・記) 第1回 藤原道長 優美な光源氏のモデルともいわれる道長。また彼が活躍した平安宮廷は豪華絢爛な空間として、人々のロマンをかき立てます。でも実際には、京都においてさえ、人々は貧しい暮らしを強いられていました。政治家・道長の実像に迫ります。 第2回 源平の群像 源平の戦いのヒーローというと、源義経です。でも義経が有名になったのは、室町時代で、当時から彼の名声が高かったわけではありません。また、義経を滅ぼした兄の源ョ朝にしても、(これはぼくも戦犯の一人ですが)、あまりに理想的なリーダーとして描かれすぎているように思います。 第3回 北条時宗と元寇 ネットでは「日本すごい!」が言われることが多いのですが、その中でも違和感を覚えるのが鎌倉武士に対する評価です。モンゴルが日本を攻めたことは史実ですが、その理由と戦いの実際、そしてその全体に関わる北条時宗が「救国の英雄」であったのかを再考します。 第4回 武田信玄と上杉謙信 信玄と謙信と言えば、戦国時代を代表する英雄です。彼らはなぜ、川中島で5回も戦ったのでしょうか。また、川中島の戦いの本当の勝利者は誰なのでしょうか。二人の実像に迫りながら、その戦略を考えます。同時に「権威」に対する姿勢の違いに着目します。 第5回 織田信長 信長ほど、評価が揺れている人は珍しい。明治時代には勤皇家と称され、現代では「ただの戦国大名」と評されることがあります。ぼくはそのどちらも違うと思っています。戦国時代を終わらせた人としての信長を考えることは、戦国時代とは何か、を考えることに他なりません。 第6回 幕末・維新のヒーローたち 大きく時代が変わるときに大きな仕事をした人が、汚れ仕事と無縁でいられるわけはありません。それにしても、坂本竜馬や西ク隆盛という人物については過大評価かなあ、と思うところが多くあります。光と闇があるとすれば、成功者の闇の部分も見ていきましょう。
本郷 和人:東京大学史料編纂所教授 1960年東京の下町に生まれ、下町に育つ。83年東京大学文学部卒業。86年、東京大学大学院人文科学科修士課程修了。88年東京大学大学院人文科学科博士課程単位取得。子どもの頃から歴史物語が大好き。いつの間にかそれが仕事になっていた。同業者で美人の妻(本郷恵子さん)との間に一男(タクトくん。ただし指揮者になる予定はない)一猫(黒猫アルトくん。ただし唱わない)あり。著書に『人物を読む日本中世史』(講談社)ほか多数。
筆記用具
・4/11(金)は休講となりました。5/16(金)に補講を行ないます。 ・Vimeoを使用した、教室でもオンラインでも受講できる自由選択講座です(講師は教室)。見逃し配信(2週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。