ベートーヴェンが交響曲や弦楽四重奏曲を発表するのは30歳を迎える1800年になってからである。1792年11月にウィーンに進出してからの8年間はピアニストとしての活躍で名声を得ていた。当時の演奏家は自らの演奏技巧を余すところなく発揮するための自作品をレパートリーとするのが一般的であった。ベートーヴェンもその例にもれずピアノ・ソナタやピアノ協奏曲、そして、ピアノを伴う室内楽曲を早くから作曲していた。それらは今でも広く親しまれている。一方、管楽器を含む室内楽作品は演奏機会に恵まれないまま今日に至っている。そこにはボン時代の宮廷楽士の延長線上にいるベートーヴェンの姿があり、伝統様式を踏襲しながらも新たな表現世界を追求しようとする様々な工夫がみられる。(講師・記) **各回の予定** 1) ボン時代:ボン宮廷楽士としてのベートーヴェン。同僚楽士たちのための作品と同僚とのアンサンブル作品。フルート2本の二重奏曲WoO 26、クラヴィーアとフルートそしてファゴットのための三重奏曲WoO 37、ホルン、オーボエ、クラリネット、ファゴット各2本による八重奏曲(パルティア)Op.103 2) ウィーン初期:1795年の2セット。2本のオーボエと1本のイングリッシュホルンのための三重奏曲、モーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》の〈お手をどうぞ〉による8つの変奏曲WoO 28、三重奏曲・ハ長調Op.87 3) ふたつの六重奏曲:2本のホルンと2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための六重奏曲・変ホ長調Op.81b、2本のクラリネット、2本のファゴット、2本のホルンのための六重奏曲・変ホ長調Op.71 4) モーツァルト受容と革新:ピアノと管楽器のための五重奏曲・変ホ長調Op.16 5) フルート、ヴァイオリンとヴィオラの三重奏による7楽章セレナーデ・ニ長調Op.25 とホルン・ソナタ・ヘ長調Op.17 6) ベートーヴェンの大ヒット作品:弦楽器と管楽器による七重奏曲・変ホ長調Op.20
平野 昭:音楽評論家 1949年横浜生まれ。武蔵野音楽大学大学院修了。静岡文化芸術大学名誉教授、沖縄県立芸術大学客員教授、桐朋学園大学特任教授。前慶應義塾大学文学部教授。18〜19世紀の西洋音楽史研究。特にドイツ語圏の作曲家作品研究が専門領域。とりわけベートーヴェンの全作品の分析的研究。『ベートーヴェン』(新潮社)、『人と作品:ベートーヴェン』(音楽之友社)、『音楽キーワード事典』(春秋社)、『ベートーヴェン事典』(東京書籍・共著)、『ベートーヴェン大事典』(平凡社・監修と共訳)等。音楽評論家として放送出演や「毎日新聞」等執筆。
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