日本人が書いた漢文(古代中国古典語で書かれた文章)、すなわち日本漢文には母語である日本語の影響が避けがたく、その不自然さ、誤用の程度は、ネイティブの中国人が書く漢文(純漢文)に近いものから中国人には理解不能な漢字文に至るまで、実にさまざまである。それは、漢文を書く人、漢文で書かれる対象(内容)、書かれる状況・背景などによって,漢字の使い方に大きな差異が生じるからで、日本語を基盤とした文章は漢文との逕庭がはなはだしい。そこで、古代日本の漢文(漢字)資料を原文に基づいて丁寧に読み進めながら、漢字に込められた古代人の言語観や文学性、そして日本語との葛藤を浮き彫りにしていくことにする。 ●今期:日本漢文の源流をたどる 日本では5世紀から本格的に漢字の使用が始まるが、「稲荷山古墳鉄剣銘」「江田船山古墳太刀銘」「隅田八幡宮人物画像鏡銘」後の、6,7世紀における日本漢文を読み進め、漢文の作成に日本語がどのような影響を与えていったか検証していく。 @6、7世紀の日本漢文 A和文への流れ ー宣命と祝詞ー <今後の予定> 夏学期:記紀を読む 秋学期:万葉集の漢文を読む 冬学期:上代撰述の風土記を読む ・・・・・
沖森 卓也:(おきもりたくや)立教大学名誉教授。東京大学文学部国語国文学科卒業。1977年、同大学大学院人文科学研究科修士課程修了。白百合女子大学助教授、立教大学文学部教授を歴任。博士(文学)。専門は日本語学。主な編著書に、「日本語全史」「日本漢字全史」(以上、筑摩書房)、「日本の漢字 1600年の歴史」(ベレ出版)、「日本古代の表記と文体」、「日本語の誕生―古代の文字と表記」、「日本古代の文字と表記」、「文字と古代日本」共編、「上宮聖徳法王帝説 注釈と研究」共著、「藤氏家伝 注釈と研究」共著(以上、吉川弘文館)、「風土記」共編著、「古代氏文集」共編著(以上、山川出版社)、「新校古事記」共著(おうふう)、「漢文資料を読む」編,「日本漢文を読む[古代編]」共編(以上、朝倉書店)などがある。
参考図書:「日本漢字全史」(ちくま新書)、「日本漢文を読む 古代編」(朝倉書店)
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