シューベルト講座の第2シリーズでは、「魔王」作曲後から1820年までの創作を取りあげます。この時期のシューベルトはベートーヴェンやロッシーニなどのさまざまな作曲家の創作に対して、自身の独創的な創作を目指して試行錯誤が続くことになります。シューベルトの創作において、1819年頃から数多くの未完成の作品が続くのは彼の試行錯誤を示しています。このシリーズでは1816年から1820年の時期の創作を取りあげて、ジャンルごとにシューベルトのさまざまな試みを考えてみたいと思います。 (講師・記) 第1回「交響曲の創作」 この時期に作曲された作品は交響曲第4番から第6番です。この時期にシューベルトに大きな刺激を与えたのはロッシーニです。ロッシーニからの影響は2曲の「イタリア風序曲」により鮮明に反映されています。この時期の交響曲や序曲を通してシューベルトのこの時期の創作の試みを取りあげます。 第2回「室内楽の創作」 シューベルトの理想として一人はモーツァルトでした。それは3曲の「ヴァイオリン・ソナチネ」に反映されています。この時期の弦楽四重奏曲は第11番のみです。1820年に作曲された未完の第12番ハ短調で創作は大きな転換を迎えることになります。この回では「アダージョ・ロンド・コンチェルタンテ」というピアノ四重奏曲も取り上げます。 第3回「リートの創作」 この時期は多様な創作試みの性格を示しています。もっとも有名なのは「楽に寄す」や「死と乙女」、「子守歌」です。そのほか、「ケレスの嘆き」や「至福《ミンネリート》」、「竪琴弾きの歌」、「ガニュメート」などの意欲的な作品が書かれています。 第4回「ピアノ作品の創作」 シューベルトのピアノ作品の創作はピアノ・ソナタや連弾作品、変奏曲、舞曲などからなります。その中で1817年作曲の「ヒュッテンブレンナーの主題による13の変奏曲」は重要です。この回ではこの変奏曲や「6つのエコセーズ」などの舞曲、ピアノ・ソナタの創作について考えてまいります。 第5回「劇音楽の創作」 初期から晩年までシューベルトはオペラや劇の付随音楽などの劇音楽の創作に強い関心をもちました。この時期の創作で1819年に初演されたジングシュピール「双子」が作曲されました。この回では取り上げられることの少ない「ヨーゼフ・シュペンドゥを称えるカンタータ」などの合唱作品も取り上げます。 第6回「宗教作品の創作」 シューベルトの創作でミサ曲や宗教作品は特別の意味をもっていました。この時期に「ミサ曲第4番」、「ドイツ語哀悼ミサ曲」が作曲されたほか、「スターバト・マーテル」や「タントゥム・エルゴ」などの作品が作曲されました。これらは教会での演奏を目的としていました。
西原 稔:桐朋学園大学教授 山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士過程満期退学。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。18、19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。「音楽家の社会史」、「聖なるイメージの音楽」(以上、音楽之友社)、「ピアノの誕生」(講談社)、「楽聖ベートーヴェンの誕生」(平凡社)などの著書のほかに、共著・共編で「ベートーヴェン事典」(東京書籍)、監訳・共訳で「オペラ事典」、「ベートーヴェン事典」(平凡社)などがある。現在、シューマンとブラームスに関する著作に取り組んでいる。
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