現代社会において、看護、介護、保育、カウンセリングなど、心のケアの必要性は増加の一途をたどっており、誰もが無関係ではあり得ません。しかし、看護師、介護士、保育士は慢性的な人手不足になっており、ケアにおいて何が必要なのか、という原理的な問題についても十分な理解が浸透していません。ケアの原理を考えるには、人間についての理解が不可欠であり、適切な人間理解は自己理解を深めるだけでなく、他者への適切なケアを可能にしてくれます。そして、こうした人間理解、ケアの原理を考える上で、現象学という哲学の思考法はとても役に立つのです。 この講座では、まず、フッサール現象学における本質観取という方法によって、心の発達を中心に人間性の本質を考えます。そこから、人間の持つ様々な不安、苦悩に目を向ければ、そこから生じる心の病についても理解が拡がってくるでしょう。そして、こうした人間理解に基づいて、病気の人や高齢者、子供たちの苦しみがわかってくれば、彼らに何が必要なのかも見えてくるはずです。現象学の視点から、看護、介護、保育、心理的治療の原理が理解できれば、専門家にかぎらず、誰もが適切なケアを行なえる可能性が拡がります。それは、相互ケアを必要とする現代社会において、とても重要なことなのです。(講師・記) 〈1〜6月各回の予定〉 1 心のケアと現象学 ― ケアのための現象学入門 2 心の発達を考える ― ケアのための人間理解 3 不安から生まれる心の病 ― ケアが必要な心の問題 4 心のケアに必要な条件 ― 心理療法の原理 5 看護、介護、保育の現象学 ― 患者、高齢者、子供のケア 6 ケアの倫理と相互ケア社会 ― 利他の本質を考える ※必要な資料は教室にて配布します。 ※講義内容は、進行具合によって若干変更する場合があります。
山竹 伸二:1965年広島生まれ著述家。評論家、同志社大学赤ちゃん学研究センター嘱託研究員。 桜美林大学非常勤講師。専門は現象学、精神分析、心理療法論、ケア論、子育て論。著作に「認められたい」の正体』(講談社現代新書)、『子育ての哲学』(ちくま新書)、『不安時代を生きる哲学』(朝日新聞出版)、『本当にわかる哲学』(日本実業出版)、『「本当の自分」の現象学』(NHKブックス)、『心理療法という謎』(河出ブックス)、『心の病に挑んだ知の巨人』(ちくま新書)、『ひとはなぜ「認められたい」のか』(ちくま新書)、『心理療法の精神史』(創元社)、『共感の正体』(河出書房)、『無意識の正体』(河出書房)、『フロイト再考』(講談社)など
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