「最も多く愛する者は敗者である。そして苦しまねばならぬ」。こんな言葉がある『トーニオ・クレーガー』(1903年)を、トーマス・マン生誕150年を迎える年に読みます。この作品は、翻訳を通じて、三島由紀夫、北杜夫、辻邦夫、村上春樹、平野啓一郎など作家やクリエーターに多大な影響を与えてきました。事実、日本では15名の碩学による翻訳があります。世界でも類をみない作品受容、一体なぜなのでしょうか。本講座では、この作品を皆さんと味読しながら、作品の魅力に迫りたいと思います。(講師・記) 各回のテーマ •第1回授業:日本における『トーニオ・クレーガー』受容 (三島由紀夫、北杜夫、辻邦夫、村上春樹、平野啓一郎) •第2回授業:トーニオ・クレーガーの右往左往 (リューベック、イタリア、ミュンヒェン、リューベック、デンマーク) •第3回授業:トーニオ・クレーガーとは何者か (北と南、父と母、市民と芸術家、クレーガーとトーニオ) テキスト 本講座では高橋義孝訳『トニオ・クレーゲル』(新潮文庫)をテキストとして指定しておきます。ただし、実吉捷郎訳(岩波文庫)やその他の翻訳でも構いません。各自、ご準備ください。
小黒 康正:1964年生まれ。北海道小樽市出身。元ミュンヒェン大学日本センター講師。現在、九州大学大学院人文科学研究院教授、同研究院附属言語運用総合研究センター長、日本独文学会会長、日本学術会議連携会員、西日本日独協会副会長。著書に『黙示録を夢みるとき トーマス・マンとアレゴリー』(鳥影社、2001年)、『水の女 トポスへの船路』(九州大学出版会、2012年;新装版2021年)、『100分de名著 トーマス・マン『魔の山』』(NHK出版、2024年)。編著に『対訳 ドイツ語で読む「魔の山」』(白水社、2023年)など。訳書にヘルタ・ミュラー『心獣』(三修社、2014年)、クリストフ・マルティン・ヴィーラント『王子ビリビンカー物語』(同学社、2016年)、ヘルタ・ミュラー『呼び出し』(三修社、2022年)、フケー『皇帝ユリアヌスと騎士たちの物語』(同学社、2023年)など。2024年5月にNHK「100分de名著 『魔の山』」に講師として出演、合気道四段。
テキスト トーマス・マン「トーニオ・クレーガー」
Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。見逃し配信(1週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはcb9info@asahiculture.comで承ります。