シルクロード西域北道の交通の要衝に位置していたオアシス国家・クチャ(亀茲)国は、かつて敬虔な仏教国として栄え、西域北道における仏教美術制作の中心地でもありました。5〜7世紀頃に最盛期を迎えたクチャの芸術文化の繁栄を現代へと伝えてくれるのが、この地に数多く残る仏教石窟寺院の遺跡です。クチャの石窟寺院の内部は、色鮮やかな壁画により華やかに荘厳(しょうごん)されていましたが、その大半は仏教説話を描いたものでした。これらの壁画を読み解くことにより、当時のクチャの人々が親しんでいた仏教説話の世界観を、生き生きと追体験することが可能となります。この講座では、クチャの壁画の中でも、仏弟子のエピソードに焦点を当てた作例を重点的に解説します。後に十大弟子として知られるようになる、釈尊の主要な弟子たちの多くは、はじめから敬虔な仏弟子だったわけではなく、王族、商人、理髪師、異教徒のリーダーなど、様々な別のキャリアからの、言わば「転職組」でした。これらの仏弟子が仏教に帰依するに至った、奇妙で興味深い経緯を、壁画を絵解きしながら紹介していきます。
檜山 智美:国際仏教学大学院大学特任研究員 仏教美術史の研究者。専門はシルクロードの仏教石窟寺院の壁画。2016年ベルリン自由大学にて博士号(美術史)を取得。 2010〜2016年にかけてベルリン国立アジア美術館の研究員として勤務、2018年10月〜2023年9月、京都大学白眉センター・ 人文科学研究所特定助教、2023年10月より現職。日本学術振興会特別研究員RPD。
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