都あるいは都市とは「王の居城があるところひいては権力の中心地である」というようなイメージをわたしたちはもっています。しかし人類史の中には王のいない都市、すこしこむずかしく言えば、わたしたちが「高度な政治システム」と関連づけている恣意的な権力や支配、暴力の形態が不在の都市が存在します。こうした人類史におけるもう一つの(オルタナティブ)都市については、人類学者デイヴィッド・グレーバーと考古学者デイヴィッド・ウェングロウの共著である『万物の黎明――人類史を根本からくつがえす』(酒井隆史訳、光文社、2023年)の「第8章 想像の都市」でも論じられているところです。 当講座では「第8章 想像の都市」を詳しく読み込みつつ、「メソポタミア、インダス川流域、ウクライナ、中国など、ユーラシア大陸に最初に誕生した都市民たちは、いかにして王のいない都市を建設したのか」について考えてみましょう。(講師・記) ※2024年10月期「考古学者と『万物の黎明』を読む――人類史と文明の新たなヴィジョン」を掘り下げる内容でもありますが、今期からのご受講でも問題のない内容です 第1回 これまでの都市論をふりかえる――王のいる都市 第2回 想像の都市――王のいない都市(1) 第3回 想像の都市――王のいない都市(2)
小茄子川 歩:こなすかわ・あゆむ 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・特任准教授 1981年生まれ。デカン大学院大学博士課程修了(Ph.D.)。2008年から2013年まで、インド政府招聘留学生としてインド共和国・プネーに所在するデカン大学院大学考古学科に学び、インダス文明遺跡の調査に参加。現在は同大学院大学が行うインダス文明遺跡の調査に発掘区画・整理作業責任者として参加している。日本学術振興会特別研究員PD、人間文化研究機構総合人間文化研究推進センター研究員/京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科客員准教授を経て、現職。専門は、考古学、南アジア基層社会文化・政治経済史研究。著書に『インダス文明の社会構造と都市の原理』(2016年、同成社、第6回日本南アジア学会賞受賞作品[2017年])、共編著に『社会進化の比較考古学—都市・権力・国家—』(2021年、雄山閣)。
※Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。見逃し配信(1週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはcb9info@asahiculture.comで承ります。