ヴィクトリア女王の60年余におよぶ在位(1837-1901年)の最後の十年間に当たる世紀末の時代、イギリスは繁栄の頂点にあった。しかしながらその一方で、鋭敏な感覚をそなえた詩人や芸術家たちのなかには、いやおうなく進んでいく物質文明や科学的合理主義に対して、不安や疑念、嫌悪などの感情を抱く者も少なくなかった。彼らは、いまや爛熟期を迎えたこの時代を、終末や頽廃、倦怠といった感覚と結びつけ、それを自身の作品のうえに表現した。この春、日本において久しぶりに大規模なビアズリーの展覧会が開催される機会に、世紀末のイギリスにおいて展開された多様な美術表現を概観する。 (講師・記) 図版:オーブリー・ビアズリー《いかにしてトリストラム卿は愛の飲み物を飲んだか》、1893-94年、素描、ハーバード大学フォッグ美術館蔵 ・本講座の配布資料はございません。 <スケジュール>※スケジュールは変更する場合がございます。 第1回 「想像力の解放——ラファエル前派と象徴主義」 第2回 「性をめぐる密かな闘争——ジェンダー、セクシャリティ、ニュー・ウーマン」 第3回 「線の芸術——世紀末の出版文化とイラストレーション」
荒川 裕子:法政大学教授 神奈川県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。美術史専攻。清泉女子大学等の講師、静岡文化芸術大学文化政策学部助教授を経て、2006年より法政大学キャリアデザイン学部助教授、2008年同学部教授。専門は美術史、アート・マネジメント、文化政策。主な研究テーマはイギリスを中心とする近代以降の絵画史、特に風景画の変遷。著書に『ジョン・エヴァレット・ミレイ ‐ヴィクトリア朝 美の革新者』『もっと知りたいターナー –生涯と作品』『もっと知りたいラファエル前派』(東京美術)、共著『デザインとデコレーション –ウィリアム・ブレイクからエドワード・M・コーファーへ』など。
・日程が変則的です。ご注意ください。 ・Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。見逃し配信(1週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。