極めて知的な作家であった芥川龍之介は、執筆に当たって、単なる生々しい現実の再現ではなく、整った構成と鮮やかな切り口で〈人間の真実〉を語りました。しかし、その作家としての歩みは〈成熟〉ではなく〈崩壊〉へと向かうものでした(昭和2年の自死)。これは、彼の創作の方法そのものに起因するように思われます。「原典の語り直し」「逆説」「情念を高める結末」などを視点として、改めて作品を読み、知的分析の徹底がどのような世界を招来するか、を究明していきます。同時に、そのような創作方法の深層に潜む〈母の喪失〉に注目します。 @1月 9日(木) 芥川的知性とアフォリズム的作品 ー「侏儒の言葉」と、初期作品「老年」「羅生門」 A2月13日(木) 模型化された〈人間の真実〉と解体の試み ー「杜子春」「トロッコ」「蜜柑」「少年」 B3月13日(木) 知的分析の果てにあるもの ー「歯車」「或阿呆の一生」「西方の人」
中野 新治:元梅光学院大学学長 1947年生。関西学院大学文学部日本文学科卒。元梅光学院大学学長、前梅光学院学院長。95年に宮沢賢治賞奨励賞を受賞。主な著書に『宮沢賢治童話の読解』翰林書房 など。
筆記用具 教材として資料をお配りする場合、実費をいただきます。 ※設備費は、教室維持費です。