社会派推理小説の大家・松本清張の代表作といえる『砂の器』(1961)。不遇の生い立ちであった一人の男が戦争によって運命を変え、社会での成功を勝ち得ようとする。その過程で犯罪は生まれた。この物語には戦争と差別が深く絡み、そして事件を解くカギは戸籍にある。これらは「近代日本」の真相を明るみにする要素にほかならない。栄光を掴みかけた男を殺人犯へと駆り立てた原因は何か?そこにみえてくる「昭和」の国家、社会の実態とは? 本講座では、『砂の器』を読み解くことを通して、その時代背景としての昭和の「日本」の「光」に隠れた「陰」の部分を浮き彫りにし、当時を生きていた「日本人」の諸相を再考したい。(講師:記)
遠藤 正敬:えんどう・まさたか 1972年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。博士(政治学)。早稲田大学台湾研究所非常勤次席研究員。早稲田大学、宇都宮大学等非常勤講師。専攻は政治学、日本政治史。著書に『犬神家の戸籍−「血」と「家」の近代日本』(青土社、2021)、『天皇と戸籍−「日本」を映す鏡』(筑摩選書、2019)、『戸籍と無戸籍−「日本人」の輪郭』(人文書院、2017)、『戸籍と国籍の近現代史−民族・血統・日本人』(明石書店、2013)等。
筆記用具
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