この講座では英国の人気作家、ジェイン・オースティン(1775 – 1817)の小説『高慢と偏見』(1813年)を、「階級」を主なキーワードとして読んでいきます。この小説は、ヒロインのエリザベス・ベネットが、階級が上のダーシー氏と結婚して「玉の輿」に乗る物語として捉えられがちですが(特に米国で)、エリザベスは「紳士」の娘であり、あくまでもダーシー氏とは社会的に対等の立場にいる女性として描かれています。それではなぜエリザベスの社会的地位が低いと解釈されがちなのでしょうか。今学期から2期にわたって『高慢と偏見』をとりあげ、時代背景、作品に描かれる英国の社会と文化など、階級を含む様々な要素を考察し、作品とその時代の理解を深めていきます。さらに、現代におけるオースティンの多大な人気にも注目し、『高慢と偏見』のドラマ化、映画化、翻案なども見ていきます。作品のあらすじや結末などにも触れますので、作品はあらかじめ読んでおくことをお勧めします。(講師・記)
新井 潤美:あらい・めぐみ 東京大学大学院教授 東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士号取得(学術博士)。東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門はイギリス文学、イギリス文化、比較文学。主な著書に、『階級にとりつかれた人びと 英国ミドル・クラスの生活と意見』(2001)中公新書、『へそ曲がりの大英帝国』(2018)平凡社新書、『執事とメイドの裏表―イギリス文化における使用人のイメージ』(2011)白水社、『魅惑のヴィクトリア朝―アリスとホームズの英国文化』(2016)NHK出版、『パブリック・スクール―イギリス的紳士・淑女のつくられかた』(2016)岩波新書、『〈英国紳士〉の生態学―ことばから暮らしまで』(2020)講談社学術文庫、『ノブレス・オブリージュ―イギリスの上流階級』(2021)白水社、『英語の階級―執事は「上流の英語」を話すのか?』(2022)講談社選書メチエ。訳書に、ジェイン・オースティン著『ジェイン・オースティンの手紙』(2004)岩波文庫、他。
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