(1)25年3月1日 加藤周一はなぜ憲法を護ろうとするのか(1)――戦争と平和 日本国憲法の基本原則は、国民主権と平和主義(戦争の放棄)と基本的人権の尊重である。ところが、日本政府は、憲法公布の直後から、解釈改憲を繰り返し、明文改憲を目指している。一方、加藤は一貫して憲法擁護を主張しつづけた。なぜ加藤は憲法擁護の立場を採ったのか。それは戦争に、戦争につながる可能性に反対だったからである。なぜ戦争に反対したのか。戦争は生命や財産を奪い、人間の心身を傷つけるばかりではなく、人間のつくりだした文化を破壊し、人間の可能性を否定するからである。一方、平和を構築する手立てをどのように考えたのか。加藤が願ってやまなかった平和希求、戦争反対、憲法擁護という考え方が、いかなる考え方なのかについて考える。 (2)25年3月29日 加藤周一はなぜ憲法を護ろうとするのか(2)――核兵器と原子力発電 20世紀は戦争の世紀であり、反戦運動の世紀であり、科学技術の世紀である。科学技術の開発は戦争を一変させた。「総力戦」となり戦闘員と非戦闘員の区別は不可能となり、無差別大量殺人兵器が次々と発明される。その最たるものは核兵器である。今日多くの国が「核の抑止力」を外交の基本に据える。ゆえに今日を生きる人びとは「核の脅威」にさらされる。一方、科学技術は原子力発電装置をつくりだした。核兵器と原発の原理は共通する。異なるのは安全装置の有無である。しかもすべての機械は故障する可能性がある。核の脅威と原発の不安を防ぐには「核の否定」しかないと加藤周一は考えた。その条件は、つまるところ「戦争放棄」を放棄しないことにある。
鷲巣 力:わしず・つとむ 1944年東京都生まれ。編集著述業。東京大学法学部卒業、平凡社に入社。「林達夫著作集」や「加藤周一著作集」などを担当、『太陽』編集長、同社取締役に就く。平凡社退社後、東京大学、明治学院大学、跡見学園女子大学、立教大学で非常勤講師。川崎市民アカデミーで講師兼運営委員を務める。立命館大学客員教授、同大学加藤周一現代思想研究センター長を経て、現在、同研究センター顧問、市民・学生とともに公開講読会を4年半にわたり継続中。著書に『自動販売機の文化史』(集英社新書)、『公共空間としてのコンビニ』(朝日新聞出版)、『「加藤周一」という生き方』(筑摩書房)、『加藤周一はいかにして「加藤周一」となったか――『羊の歌』を読み直す』(岩波書店)、『書く力――加藤周一の名文に学ぶ』(集英社新書)、『丸山眞男と加藤周一――知識人の自己形成』(共著、筑摩書房)、『増補加藤周一を読む』『林達夫のドラマトゥルギー――演技する反語的精神』(以上、平凡社)など。
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