最近、ブラックホールの研究者のノーベル賞の受賞が相次いでいます。2017年のノーベル物理学賞は、世界初の重力波の検出に対してアメリカのLIGO(ライゴ)チームの3名に贈られました。約13億光年先でのそれぞれが太陽の約30倍の重さを持つ双子のブラックホールの衝突によりつくられた重力波でした。また、2020年のノーベル物理学賞は、ブラックホールの理論研究への1名に加えて、我々の銀河の中心にある太陽の約400万倍もの重さがある巨大ブラックホールの観測的研究の成果が評価された2名に与えられたものです。この講座では、これらノーベル賞を受賞した研究をはじめ、ブラックホールの最新の理論と観測の研究をわかりやすく解説いたします。(郡和範さん記) 画像©NASA <各回の日程・講師・テーマ> [第1回 1月11日 名古屋大学教授・白水徹也さん「理論で解説!ブラックホールとは何か?」 ](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7743495) 2020年のノーベル物理学賞を受賞したペンローズの業績を含め、ブラックホールの定義や、ホーキングらが証明したその興味深い数学的性質について、できるだけ平易な言葉で解説を行います。 [第2回 1月25日 国立天文台水沢VLBI 観測所所長・本間希樹さん「電波で観測!超巨大ブラックホールの影を撮影」 ](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7743496) イベント・ホライズン・テレスコープは、2019年に楕円銀河M87の巨大ブラックホールの撮影に成功し、また2022年には天の川銀河の巨大ブラックホールの写真も公表しました。本講演では、同プロジェクトメンバーである講師が、撮影の方法や得られた写真の意義、今後の展望などについて、わかりやすく解説します。 [第3回 2月1日 筑波大学教授・大須賀健さん「コンピューターシミュレーションで探る!ジェットを吹き出すブラックホール」](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7743498) 強力な重力で物質を引き付けるはずのブラックホールの近傍で、なぜ超高速なガス噴出流「ジェット」が生じるのでしょうか?100年以上も解明されないジェットについて、最新の研究成果も交えて優しく解説します。 [第4回 2月8日 JAXA宇宙科学研究所准教授・山口弘悦さん「X線で観測!躍動するブラックホール」](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7743499) 人類史上初のブラックホールの発見は、1970年頃のX線観測によってもたらされました。本講演では、X線観測によるブラックホール研究の歴史と、JAXAが2023年9月に打ち上げたX線天文衛星XRISMの最新成果をご紹介します。 [第5回 4月19日(土)15:30〜17:00 大同大学教授・斉田浩見さん「赤外線で観測!私たちの銀河系の中心に潜む巨大ブラックホール」](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7743500) 重力現象を説明する理論の最有力候補はアインシュタインの一般相対性理論ですが、現実のブラックホール(BH)の強い重力を一般相対論で説明できるかどうかは検証中です。その検証に、私たちの銀河系中心の巨大BHを周回する星の赤外線観測を通して迫る研究に取り組んでいます。この研究について平易な解説を試みます。 [第6回 5月10日 千葉大学教授・久徳浩太郎さん「重力波で観測!ブラックホール連星の衝突」](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7743501) 10年前に史上初めて重力波が検出され、ブラックホールが直接捉えられました。最近ではさらに「PTA」もまた別のブラックホールを重力波で捉えつつあります。重力波でわかったブラックホールの性質を紹介します。 [第7回 6月7日 国立天文台教授・郡和範さん「ダークマターの正体はブラックホールか? 宇宙誕生の秘密と蒸発するブラックホール」](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7743502) 我々の宇宙は約138億年前に、インフレーションによる加速的膨張とビッグバンの火の玉で始まりました。その誕生と共に、大量のミニブラックホールが作られたことがカーとホーキングにより予言されています。これらは恒星の最期に作られる通常のブラックホールと区別して、原始ブラックホールと呼ばれます。軽い原始ブラックホールはホーキング輻射を放出して蒸発してしまいますが、重いものは現在まで生き延びていてダークマターとして存在している可能性があります。この理論をわかりやすく解説します。また、シリーズ全7回のそれぞれの要点をまとめるとともに、総括を行います。
郡 和範:こおり・かずのり 国立天文台教授 1970年兵庫県生まれ。2000年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。2004年、米ハーバード大学博士研究員。2006年、英ランカスター大学 研究助手、2009年、東北大学大学院助教、2014年、高エネルギー加速器研究機構准教授などを経て、現職。また、高エネルギー加速器研究機構・総合研究大学院大学・東京大学カブリIPMUの教員も兼任。研究内容は、宇宙論・宇宙物理学の理論研究 (キーワード:ビッグバン元素合成、バリオン数生成、インフレーション宇宙論、ダークマター、ダークエネルギー、ニュートリノ、ブラックホール、重力波、宇宙線など)。著書に『宇宙物理学(KEK物理学シリーズ3)』(共立出版)、『宇宙はどのような時空でできているのか』『「ニュートリノと重力波」のことが一冊でまるごとわかる』(ベレ出版)などがある。
白水 徹也:しろみず・てつや 名古屋大学大学院多元数理科学研究科/素粒子宇宙起源研究所/高等研究院教授 1969年福岡県生まれ。1996年、京都大学大学院理学研究科物理学第二専攻博士課程修了。1996年、東京大学大学院理学研究科助手、2002年、東京工業大学大学院理工学研究科助教授/准教授、2008年京都大学大学院理学研究科准教授を経て、現職。また、1998年から2年間東大を休職しイギリスのケンブリッジ大学に研究員として在籍。研究内容は、一般相対論・宇宙論の理論研究 (キーワード:ブラックホール、高次元宇宙、インフレーション宇宙など)。著書に『宇宙の謎に挑む ブレーンワールド』(化学同人)、『アインシュタイン方程式』(サイエンス社)『ホーキング、最後に語る』(早川書房)などがある。
本間 希樹:ほんま・まれき 国立天文台教授 1971年アメリカ合衆国テキサス州生まれ、神奈川県育ち。東京大学大学院博士課程修了後国立天文台に勤務し, 2015年より国立天文台教授, 現在水沢VLBI観測所所長を兼務.超長基線電波干渉計(VLBI)を用い, 銀河系構造やブラックホール撮影などの研究を行っている.著書に『巨大ブラックホールの謎』(講談社)、『国立天文台教授もおどろいた ヤバい科学者図鑑 』(扶桑社)等. 平成29年よりNHKラジオ『子ども科学電話相談』の回答者も務めている。
大須賀 健:おおすが・けん 筑波大学計算科学研究センター教授 1973年秋田県生まれ。2001年、筑波大学大学院物理学研究科修了。2001年、日本学術振興会特別研究員。2004年、立教大学理学部物理学科助手。2007年、理化学研究所基礎科学特別研究員。2008年、国立天文台理論研究部助教を経て、現職。専門は宇宙物理学理論。大規模数値シミュレーションを駆使し、ブラックホール近傍の物理および超巨大ブラックホール形成論を研究している。2022年度に日本天文学会林忠四郎賞を受賞。著書『ゼロからわかるブラックホール』 (ブルーバックス)が講談社科学出版賞を受賞。他にも『ブラックホール 暗黒の天体をのぞいてみたら』(角川ソフィア文庫)などがある。
山口 弘悦:やまぐち・ひろや JAXA宇宙科学研究所准教授 2008年に京都大学大学院理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻 博士課程を修了。理化学研究所、ハーバードスミソニアン天体物理学センター、NASAゴダード宇宙飛行センターを経て現職。X線天文衛星XRISMの副プロジェクトサイエンティストを務める。
斉田 浩見:さいだ・ひろみ 大同大学教養部物理学教室教授 1972年、群馬県生まれ。1997年、京都大学理学部、卒業。2002年、京都大学大学院人間・環境学研究科、博士課程修了。その後1年間、大阪市立大学理学研究科、日本学術振興会特別研究員PD。2003年から大同大学に講師として着任、2008年に准教授、2019年から現職。研究内容は、重力やブラックホールに関する理論研究。特に、ブラックホールの諸性質(蒸発現象や統計・熱力学)の数理的研究、天の川銀河系中心ブラックホールに関する観測データに基づく一般相対性理論の妥当性の検証、に取り組む。著書に『時空図による特殊相対性理論』(森北出版)があり、意欲的な高校生にも読めるように書いたつもり。
久徳 浩太郎:きゅうとく・こうたろう 千葉大学教授 1985年東京都生まれ。2012年に京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻修了。2013年、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校・日本学術振興会海外特別研究員。2015年、理化学研究所・基礎科学特別研究院。2017年、高エネルギー加速器研究機構・助教(文部科学省卓越研究員)。2019年、京都大学・准教授などを経て現職。研究内容は重力波および重力波を用いた物理学、特にブラックホールや中性子星などの強重力天体の探求。
Zoomミーティングを使用した、教室でもオンラインでも受講できる自由選択講座です(講師はオンライン)。見逃し配信(2週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。