ライマン・フランク・ボーム(1856-1919)の『オズの魔法使い』(The Wonderful Wizard of Oz, 1900)の名前を聞いたことがない人はおそらくいないでしょう。アメリカの児童文学の代表作であるとともに、アメリカのファンタジーというジャンルの嚆矢となった作品でもあります。もちろんヴィクター・フレミング監督、ジュディ・ガーランド主演の1939年の映画版(『オズの魔法使』)をご覧になった方も多いでしょうが、この映画と原作の間に少なからぬ相違があることは、原作を読まないとわかりません。そしてこの映画との相違のなかにこそ、本作の魅力と秘密が隠されているのです。 たとえばドロシーがオズの国で履くのは映画版ではルビーの靴ですが、原作では銀の靴です。なぜ原作者ボームが靴の色に銀を選んだのか、そして映画ではそれをなぜルビーに変更したのか。じつはそうした細部から『オズの魔法使い』という作品の背後にあるアメリカ社会、経済、政治などが見えてくるのです。またこの作品の成立にきわめて重要な役割を果たしたのが原作の挿画を担当したウィリアム・ウォレス・デンズロウですが、そのデンズロウのイラストにもさまざまな秘密が隠されています。 今回は全3回にわたり、そうした作品の成立に関わるさまざまな事情や背景に目を配りながら、『オズの魔法使い』という作品の豊かな世界を読み解いていきます。
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