今回の講座からはサマセット・モームの短編集``Cosmopolitans``(1936)を読みます。 これはモーム自身最も愛着のある作品集と述べているとおり、彼の特色が非常によく出たものです。1924年から29年にかけて米国の雑誌Cosmopolitan Magazine誌に連載された29編の短編のなかから8編を収めるテキスト(金星堂)を使用します。 内容はいかにも才人モームらしい多岐にわたるもので、スペイン、イタリア、パリ、ロンドン、南太平洋、東洋航路等と変転極まりない世界各地がその背景となっています。 各作品の長さは比較的短く、特徴ある人物の性格や生き方などを鋭い皮肉なまなざしで捉えたものが多く、人間の性向や性格は本質的に矛盾にみちた不可解なものであり、首尾一貫性を欠くものだと見るモームの人間理解のうかがえる短編ばかりです。 モーパッサンの「首飾り」にヒントを得て書かれた「物知り博士」、ロマンティックな幻想を抱いたために、現実認識を誤る失敗談を語る「詩人」、昔からの知り合いだが、語り手のことを嫌っているある魅力的な女性の数奇な人生についてひょんなきっかけで知ることになる「ルイーズ」など、楽しみながらいろんな人物たちの人生に思いをはせることもできる短編ばかりです。講読の授業なので全員に交代で訳読をお願いしておりますのでそのつもりで出席していただけたら幸いです。(講師・記) 2024年10月講読開始。 ★★新規でご受講検討中の皆様へ★★ お申し込みの前に、電話(045-453-1122)または[こちら](https://www.asahiculture.com/asahiculture/wp/school/yokohama/support/language)こちらのフォームからお問合せください。 レッスンの進め方、レベルや教室の雰囲気を知っていただくために、まずはトライアル受講(有料)をお願いしています。事前にご予約下さい。
富士川 義之:英文学者 1938年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京大学文学部教授、駒澤大学文学部教授を歴任。専門は英国の世紀末とモダニズム文学。著書に『きまぐれな読書』『新東西文学論』(みすず書店)、『ある唯美主義者の肖像』(青土社)、『英国の世紀末』(新書館)。訳書にナボコフ『セバスチャン・ナイトの真実の生涯』(講談社文芸文庫)、『青白い炎』(岩波文庫)、ワイルド『ドリアン・グレイの画像』(講談社)、ベイター『ルネサンス』(白水社)、アンジェラ・カーター『血染めの部屋』(ちくま文庫)、『ブラウニング詩集』(岩波文庫)など多数。2015年、「ある文人学者の肖像―評伝・富士川英郎」(新書館)が、第66回読売文学賞の評論・伝記賞を受賞。
<テキスト>予約販売 「Cosmopolitans」サマセット・モーム (金星堂)¥1,100(現金のみ)