小倉百人一首を選んだとされる藤原定家。自らの歌に関しては、生涯に詠んだ歌から特に二百首を選び、自歌合(じかあわせ)に仕立てました。 今回は、『定家卿百番自歌合』から、定家の恋歌の中でも白眉の歌「白妙の袖の別れに露落ちて身にしむ色の秋風ぞ吹く」を取り上げます。乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負として、定家は左歌に、かなわなかった恋の悲しみにくれる伊勢物語の業平を意識した、恋の実体験の和歌を配しました。春の淡い恋の思い出と秋の朝の切ない別れ、好勝負を味わいます。
伊藤 伸江:愛知県立大学教授 東京大学大学院人文科学研究科国語国文学専攻博士課程修了 〈研究課題〉 中世和歌 連歌及び連歌師の紀行文 中世の日記及び随筆 〈著書〉『中世和歌連歌の研究』(単著・笠間書院) 『中世日記紀行文学全評釈集成第七巻』(共著・勉誠出版) 〈論文〉「『徒然草』第百四段の筆法─王朝的章段の描きたかったもの─」 (『国語と国文学』第78巻8号)など 〈所属学会〉 中世文学会 和歌文学会 俳文学会 日本文学協会 東大国語国文学会