満洲国は出発当初「一業一社主義」の原則に基づいて官僚主導・国営企業中軸の「工業化」政策が実施された。本講義ではこうした企業の日本人経営者に光を当てて彼らの姿を通じた満洲企業経営の実態を検討する。彼らの多くはこうした「満洲」での企業経営の経験を引っ提げて日本に帰還し、戦後経営のなかで活動を再開していった。本講義ではそうした戦前と戦後の関連にも留意しつつその足跡を追うこととする。 (講師・記) 〈スケジュール〉 第一回:満洲工業化の経緯、日中・太平洋戦争下の政策推進過程、戦後への継承に関し全体像を論ずる 第二回:満洲重工業開発株式会社を皮切りに、日産の満洲移駐と満洲重工業開発株式会社(満業)の設立を通じて鮎川義介に焦点を当てて初期満洲企業経営の実像を追う 第三回:鮎川の事業を引き継ぎ満業の経営を進め経営改善を図る高碕達之介の満業中後期の実像を追う。戦後引揚過程での活動にも言及する 第四回:満州での銑鋼一貫生産を担った昭和製鋼所の経営陣に光を当ててその姿を追うと同時に戦後日本製鉄業に与えた影響に関し検討する 第五回:満洲炭鉱傘下の石炭業の実態に焦点を当てながら理事長だった河本大作の動きを検討する 第六回:「満洲国」に進出した中小企業家に焦点を当てながらその実態を検討する
小林 英夫:こばやし・ひでお 早稲田大学名誉教授 1943年生まれ。東京都立大法経学部卒業、同大学院博士課程単位取得退学。現在早稲田大学名誉教授。主要著書に『「大東亜共栄圏」の形成と崩壊』(御茶の水書房)、「満鉄−「知の集団」の誕生と死」(吉川弘文館)、『戦後アジアと日本企業』(岩波書店)、『満州と自民党』ほか多数。
★3/20は講師都合により休講、3/27(木)に補講をおこないます。(3/6記)