戦後文化や戦後思想を振り返るとき、女性たちの活動を見逃すわけにはいきません。戦後日本では、女性たちの活動は男性たちに比べると集団として表象されがち(母親たち・主婦たち)でしたが、それでも多くの女性表現者たちが目覚ましい活躍を果たしました。彼女たちの過去の営為は、現在の私たちを照らしてくれるように思います。この講座では、芸能文化・生活文化・表現文化にわけて、彼女たちの〈戦後〉を振り返ります。(講師:記) 第1回 芸能文化:黒柳徹子と吉永小百合 映画やテレビに代表される芸能文化は、その視聴者に多様な影響を与えます。同時に、視聴者の支持なしに長く芸能文化のなかで活躍するのも難しいでしょう。第1回は、タレントの黒柳徹子と俳優の吉永小百合を取り上げます。ふたりはながらく社会貢献活動や平和運動に関与してきました。またふたりの明るく闊達なイメージは、どこか戦後民主主義のイメージとも重なるように思います。ふたりの活動を振り返ることで、まずは戦後民主主義と女性との関係を探る視座を固めたいと思います。 第2回 生活文化:大橋鎭子と鴨居羊子 大橋鎭子は雑誌『暮しの手帖』の編集者として、鴨居羊子は下着デザイナーとして高名ですが、ふたりの活動は、生活改善や美しさ・心地よさの追求を通して社会と人間をよりよくしようというプロジェクトであり、その意味では戦後民主主義と接点を有するものでした。ふたりはまた、合理的・機能的な生活を提唱したことでも知られます。彼女たちの実践を紹介しながら、戦後思想のなかにふたりを位置付けたいと思います。 第3回 表現文化:有吉佐和子と山崎豊子 高名な女性作家は数多くいますが、ここでは有吉佐和子と山崎豊子を取り上げます。『複合汚染』や『恍惚の人』で知られる有吉も、『白い巨塔』などで知られる山崎も、ともに「社会派」と呼ばれることがありました。「社会派」というと、男性作家のイメージがあるかもしれませんが、彼女たちの作品に流れる思想を抽出することで、ふたりの社会批判の特質に迫りたいと思います。
山本 昭宏:神戸市外国語大学准教授。1984年、奈良県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。文学(博士)。主著に『大江健三郎とその時代』(人文書院、2019年)、『戦後民主主義』(中公新書、2021年)、『変質する平和主義』(朝日新聞出版、2024年)など。
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