日本でもとても人気のあるベルギーの画家マグリットの作品は、誰でも「あっ」と背中を押され不意に穴に落ちてしまう面白さがある。シュレアリスムに属する作家たちの作品には様々な表現があるが、マグリットは私たちの現実にあるモティーフを使って、手品のようにこの世界の不可解さを解りやすく表現してくれている。身近な事物から壮大な自然空間まで、マグリットにかかればイメージの反転劇場である。彼の広げたその劇場をのぞいて楽しんでみましょう。
江本 菜穂子:名古屋造形大学名誉教授 美術史家。名古屋大学大学院博士課程後期満期単位取得退学。 専門は近代西洋美術史。特に西欧世紀末絵画から20世紀初頭の絵画、 時代と文化の関係等研究。美術評論も手がける。