シルクロードは地中海世界と広大なアジア世界を結ぶ多様な経済・文化交流の歴史的通路を象徴する雅称です。そこには生活のために苦闘した人々や新たな世界を発見し躍動する人々の姿が万華鏡のように映し出されています。シルクロードの壮大な地域と歴史に様々な角度から光を当てる新シリーズ。シーズンZはシルクロードの遺跡がテーマです。 画像説明:ドゥラ・ユーロポス遺跡 <テーマ> [第1回 10月2日 宮下佐江子先生 「ドゥラ・ユーロポスーユーフラテス河畔に建設された軍事要塞」](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7476640) シリアのユーフラテス川に臨む断崖に、たたずむドゥラ・ユーロポスはセレウコス朝が建設し、ついでパルティアの軍事要塞として、ローマ帝国と対峙し、その支配下に下った後には、サーサーン朝ペルシアに対する拠点であった。地理的要因が東西の大国の争奪の地となったのだが、軍事要塞という性格から、次第に交易都市として発展していく過程はフランス、アメリカ、イギリスなどの発掘調査によって、次第に明らかにされてきた。今回は出土品を中心にこの都市で、どのような文化活動が行われていたかを考えていきたい。 [第2回 10月30日 前田たつひこ先生 「ペルセポリス」](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7476650) 古代西アジアから中央アジアにいたる広大な地域を統一したアケメネス朝ペルシア。この帝国の心臓部に建てられた巨大な儀礼用複合施設であったとされるペルセポリスについて、その基壇に施された浮彫を中心に解いていきます。 [第3回 11月6日 森美智代先生 「キジル石窟航海者窟(第212窟)の壁画世界―異界遍歴と因果応報の物語」 ](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7476651) 中央アジア・クチャのキジル石窟航海者窟壁画には、海を渡る商人を主人公に、仏教の業思想を説く二つの物語が描かれていました。壁画の随所に一見不可解な絵画表現がみとめられますが、実はそこに画家のメッセージを読み解く鍵があるようです。1世紀以上前にあるドイツ人研究者が呈した疑問を手がかりに、壁画を読み解いていきます。 [第4回 11月20日 中野照男先生 「ベゼクリク石窟第33窟の窟内装飾の理念 ―東博蔵壁画衆人奏楽図を手がかりに」](https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7476660) トルファンのベゼクリク石窟は、ドイツ隊をはじめ各国の探検隊が調査し、壁画の一部を切り取りました。大谷探検隊が将来し、現在東京国立博物館が所蔵する壁画断片衆人奏楽図は、その第33窟からもたらされました。釈尊の涅槃に関わる図像です。この壁画断片を手がかりに、第33窟のプラン、壁画の構成とその理念を再構築してみましょう。
宮下 佐江子:国士舘大学共同研究員 1952年東京都生まれ。上智大学文学部史学科卒。国士舘大学イラク古代文化研究所共同研究員。奈良県橿原考古学研究所によるパルミラ遺跡発掘調査に1990年以来美術的遺物調査担当として参加。著書に『古代オリエントの世界』(共著)『ユーラシアの風 新羅へ』(共著)『シルクロードのガラス』(共著)ともに山川出版社など。
森 美智代:多摩美術大学講師 2003 年〜05 年北京大学考古文博院高級進修生(中国政府奨学金)。09 年早稲田大学大学院博士課程(美術史学コース)満期退学。専門分野は、中央アジアの仏教美術史。現在、多摩美術大学、武蔵野美術大学、桜美林大学、聖心女子大学、青山学院大学講師を兼任。主な論文「西域北道における誓願図について」(宮治昭責任編集『アジア仏教美術論集 中央アジアT ガンダーラ〜東西トルキスタン』中央公論美術出版、2017)など。
前田 たつひこ:平山郁夫シルクロード美術館学芸員 1954年生まれ。東海大学文学部卒業。共著に『文明の道2ヘレニズムと仏教』(NHK出版)、『カラー版東洋美術史』(美術出版)、『世界美術大全集東洋編15中央アジア』(小学館)、『死と来世の神話学』(言叢社)、訳書にF. ティッソ『図説ガンダーラ』(東京美術)、A.フーシェ『ガンダーラ考古游記』(同朋舎)ほか、論文に「クシャーン王朝揺籃の地」、「スルフ・コタルの宗教について」など。
中野 照男:東京文化財研究所名誉研究員 1950年生まれ。1973年九州大学文学部卒業、1978年九州大学大学院文学研究科博士課程中退、1978年東京国立博物館研究員、1992年東京国立文化財研究所美術部第一研究室長、その後、独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所副所長、成城大学文芸学部第二世紀特任教授を経て、現在東京文化財研究所名誉研究員。専攻分野は、東洋美術史、とくに中央アジアの仏教美術史。主な著書:『中国石窟 クムトラ石窟』(共著)1985年 平凡社、『仏画の見かた 描かれた仏たち』2001年 吉川弘文館など。
〈参考テキスト〉NHK出版 『シルクロードの世界』(ISBN:9784140817742)
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