もし、あなたがかろうじて生きている状態の野鳥を見つけたとしたら、その救命を願うのはごく普通の感情だと思います。獣医さんも同じで鳥類の獣医療の理論と技術を駆使して助ける方がいらっしゃいます。そのような活動を救護といいます。 一方、そのような傷病の個体を助けてもきりがないし、時には、院内感染した疾病を野外にひろめるなど悪い影響もある。それよりは個体群や生態系に目を向けそちらをまもる保護(保全)活動の方が大切だと考える獣医さんもおります。 どちらが正解なのでしょう。この講座では救護vs保護という、一見、対立した状態にいたった背景と、野鳥にとって、そして、それを取り巻く人々(社会)にとって望ましい未来について皆さんと一緒に考えたいと思います。 この講座で扱う具体的な事項としては、高病原性鳥インフルエンザなど鳥類が関わる感染症(寄生虫病を含みます)、鳥類を対象にした獣医学の限界と今後、環境教育としての救護活動などですので、このようなことにご関心のある方は、是非、どうぞ!(講師・記)
浅川 満彦:1959年 山梨県韮崎市生まれ。 1985年 酪農学園大学大学院獣医学研究科修士課程修了。同年、獣医師国家試験に合格し、北海道大学大学院獣医学研究科進学後、中退。酪農学園大学に助手(寄生虫学)として採用される。 1994年 博士(獣医学)号取得と同時に酪農学園大学の野生動物(医)学担当兼務。 2000年 ロンドン大学王立獣医大学校/ロンドン動物学会共同開講野生動物医学専門職修士課程に入学、翌年、修了。 2004年 文部科学省ハイテクリサーチセンター研究事業の野生動物感染症調査拠点「酪農学園大学野生動物医学センター(WAMC)」施設長兼務。傷病鳥獣の救護や死因解析に携わる。 2007年 教授昇格、獣医寄生虫病学・野生動物学担当。 2009年 日本野生動物医学会認定専門医の資格取得。 現在はWAMC運営のほか、酪農学園大学獣医学類医動物学ユニットも主宰しつつ、市民団体「野生動物の死と向き合うF・VETSの会」代表も務め、法獣医学の啓発活動で多忙。 著書多数。近著に、『野生動物医学への挑戦―寄生虫・感染症・ワンヘルス』(2021年、東京大学出版会)がある。
Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。見逃し配信(1週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。