戦後、日本の古代史研究は、倭国−日本という一国史から脱却した東アジア史の視点、民衆の多様な在り方を問う民衆史の視点が強調され、その後、女性史・ジェンダー史の視点や「天皇制」研究の新たな視点を提供する王権論、等々からの史資料・史実の見直し・再検討が重ねられて、今日にいたっています。これらの動向に、考古学や近接する諸科学との連携の成果を加えて日本の古代史像は、大きく刷新されてきました。時代の「通史」は、常に検証され、書き改め、書き加え等が必要です。このように考え、日本古代史の再検証の本講座を始める次第です。古代史に興味のある方、学び直したい方の受講を歓迎いたします。
　本期（�V期）は、継体朝・＜安閑・宣化−欽明＞両朝並立の時代にあたる6世紀前半の時代を以下の点に留意して講義します。
　この期の大王位は、その継承が流動的で不安定さを多く残しており、必然的に王位継承の争いは絶えることがなかった。頻発する王位継承争いの政治史の展開を主軸にすえて、�@王権を核とする「治天下」統治の実行されるシステム（執行体制）、�A筑紫君磐井の反乱・武蔵国造の乱等にみられる地域社会の変動、�B流動化が激しさを増す東アジア世界との国際関係、に留意して講義します。（講師・記）

＜各回のテーマ＞
第１講　継体朝の王権と「大臣・大連」・「大夫会議」
第２講　継体朝の国際外交−「継体紀」の外交記事
第３講　筑紫国造：筑紫君磐井−六世紀の地方社会と首長１
第４講　武蔵国造：笠原直使主−六世紀の地方社会と首長２
第５講　継体死去と大王陵−今城塚古墳とその埴輪群が物語るもの−
第６講　安閑・宣化朝と欽明朝の並立−継体没後の王権の混迷−

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