本講座では、産業革命盛期のイングランドに生きたウィリアム・モリスをとりあげます。誰もが知るように、モリスは芸術家、思想家、著述家、出版者など、一言では括ることができない多才な人物でした。しかし、彼の残した著述や作品を丹念に検証すると、彼の言動は単に多芸に秀でた人物の技というだけではなく、中世社会に生きた人々の仕事や社会、人々の生き方などに対する深い共感で裏打ちされ、彼の生きた19世紀イングランドに対する批判的な社会観を反映していることに気づきます。モリスの時代は、現代日本社会に酷似しています。このような観点から、彼の仕事観や芸術観、理想の社会観についてお話しようと思います。(講師・記) 【カリキュラム(予定)】 第1回 モリスと現代社会 英語史研究/英語文化史研究/18世紀以降の中世主義(Medievalism)研究/オックスフォード辞書の編纂とイギリス産業革命/モリスの社会観 第2回 モリスと仕事 Artist/Medievalist/Socialist/Publisher 第3回 モリスと産業革命 Useful Work versus Useless Toil (1884) から見える19世紀イギリス社会 第4回 モリスの理想 社会主義者モリス/『ユートピアだより(News from Nowhere)』/モリスの思想の根幹をなす概念:happiness, rest, work or toil, hope of pleasure, the working classes, production, Nature 第5回 写本・出版と中世社会 The Kelmscott Pressの設立/A Note by William Morris on His Aims in Founding the Kelmscott Press (1896) 第6回 モリスの傑作:『チョーサー作品集(The Works of Geoffrey Chaucer)』 (1896) The Lesser Arts (1877)/The Art and its Producers(1888) ********** 【広報画像】 @A facsimile of the William Morris Kelmscott Chaucer, the World Publishig Company(1958)より AW. Morris, The Collected Works of William Morris (24 vols), Cambridge University Press(1910)より
武内 信一:(たけうち・しんいち)青山学院大学名誉教授。1951年生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。国際基督教大学大学院修士課程修了。東京都立大学博士課程中退。防衛大学校助教授、愛知大学教授、青山学院大学教授を経て、現在青山学院大学名誉教授。専門は、英語文化史。著書に『英語文化史史料集』(2007)フォレスト、『英語言語文化史入門』(2008)フォレスト、『英語文化史を知るための15章』(2009)研究社。共著に『イギリスルネサンス期の言語と文化』(2010)英宝社、『世界史の中の近世』(2017)慶応義塾大学出版会。訳書に、ルドー・ミリス『天使のような修道士たち』(2001)新評論、ルドー・ミリス『異教的中世』(2002)新評論、キャロリー・エリクソン『中世人の万華鏡』(2004)新評論。他、論文及び学会報告多数。
★開催形式が変更になりました。(2024.9.24) (変更前:教室・オンライン自由選択 ➡変更後:オンライン開催) *** Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。見逃し配信(1週間限定)はマイページにアップします。各自ご確認ください。お問合せはasaculonline001@asahiculture.comで承ります。