J.ハイドンが100曲以上、モーツァルトが40曲以上(N.ザスロウは研究書『モーツァルト交響曲』1989年では78曲の可能性が指摘されている)の交響曲を作曲した事実と比した場合、ベートーヴェンの9曲という作品数は極端に少ない。ハイドン、モーツァルトの交響曲とベートーヴェンのそれとでは明らかに表現内容が大きく異なっている。作品数の減少と交響曲の表現様式の変化は、恐らく無関係ではない。今回はベートーヴェンの交響曲を時代を追って、ハイドン、モーツァルトの古典様式からどのように変化しているのかを確認しながら、ベートーヴェン音楽の本質や新たな魅力を見出してゆきたい。 第1期は1808年春に完成させた交響曲第5番ハ短調(《運命》)までとし、同年初秋に完成させ同年暮れに《運命》ととも初演された交響曲第6番ヘ長調《田園》以降の4曲は第2期に取り上げる。(講師・記) 〈スケジュール〉 1)交響曲への最初も試み、「ハ短調」交響曲スケッチとふたつの「ハ長調」交響曲。 2)1802年春に完成されたと推定される交響曲第2番の初演と初版の遅れ。いわゆる『ハイリゲンシュタットの遺書』の書かれた年の所産。 3)交響曲第3番《エロイカ》とナポレオンへの献辞抹消の逸話の真相 4)《エロイカ》交響曲における交響様式の大変革と「英雄様式期」 5)交響曲第4番「北欧神話の二人の偉人に挟まれたギリシャの乙女」などではない 6)交響曲史の変遷に大きく関わる運命的作品「運命はかくのごとき音楽で現れた」
平野 昭:音楽評論家 1949年横浜生まれ。武蔵野音楽大学大学院修了。静岡文化芸術大学名誉教授、沖縄県立芸術大学客員教授、桐朋学園大学特任教授。前慶應義塾大学文学部教授。18〜19世紀の西洋音楽史研究。特にドイツ語圏の作曲家作品研究が専門領域。とりわけベートーヴェンの全作品の分析的研究。『ベートーヴェン』(新潮社)、『人と作品:ベートーヴェン』(音楽之友社)、『音楽キーワード事典』(春秋社)、『ベートーヴェン事典』(東京書籍・共著)、『ベートーヴェン大事典』(平凡社・監修と共訳)等。音楽評論家として放送出演や「毎日新聞」等執筆。
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